※この記事は、日本で外国人を採用し、雇用を開始したい企業様向けに書いています。
(※大阪入国管理局管轄:滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県)


2019年、入管法が改正され、留学ビザをお持ちの外国人留学生が、就労ビザを取得し、これまでNGであった接客業や現場作業で、日本で働ける制度(特定活動ビザ)が設けられました。この制度(特定活動ビザ)の新設の背景は、中小企業の人手不足問題の他に、大卒以上の外国人留学生が30%程度に留まっていることが挙げられます。大卒以上の留学生の日本での就職率が30%程度に留まっている一方、大学卒業後(大学院修了後)日本で就職したいと思っている留学生は65%近くにも上り、就職希望者と実際の就職率に大きな乖離が見られます。

そこで、外国人留学生の日本国内での就職率を現状の3割から5割に向上させることを目指すことが閣議決定され、2019年5月に、留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動ビザ」という新しい制度が設けられました。

今回の記事では、留学ビザから就労ビザへの変更申請にあたり、既存の在留資格(就労ビザ)を整理した上で、新たな留学生の就職支援「特定活動ビザ」について、解説いたします。留学生の就職支援のための「特定活動ビザ」の開設により、これまでNGだった飲食店(レストラン等)・宿泊業(ホテル・旅館)・小売店(百貨店や量販店等)の接客スタッフ、製造業の現場作業員の仕事内容で、外国人留学生を正社員雇用することができるようになりました。

既存の就労ビザで外国人留学生を雇用できる職種・種類

はじめに、既存の就労ビザで外国人留学生を雇用するパターン(仕事内容・在留資格・審査要件)を整理します。

今回、新設された留学生の就職支援「特定活動ビザ」は、飲食店(レストラン等)・宿泊業(ホテル・旅館)・小売店(百貨店や量販店等)の接客スタッフ、製造業の現場作業員の仕事内容で、外国人を正社員雇用できるものですが、従来は、仕事内容が主に、「通訳翻訳業務」「貿易事務」「海外営業」「設計技術者」(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)に限られていました。

従来までの留学ビザから就労ビザへ変更申請するパターン(仕事内容・在留資格・審査要件)の一覧は以下の通りです。

雇用する職種
(仕事内容)
必要なビザ
(在留資格)
主な審査要件
通訳翻訳・貿易事務・海外営業など語学を活かした業務 「技術・人文知識・国際業務ビザ」 【国際業務】原則4年制の大学で専攻していた学問と仕事の業務内容の関連性が必要。大学で専攻していない場合は、3年の実務経験が必要。
製造業や建設業の設計技術責任者・IT企業のシステムエンジニア等 【技術】原則4年制の大学で専攻していた学問と仕事の業務内容の関連性が必要。大学で専攻していない場合は、専門学校卒業又は10年の実務経験が必要。
不動産業の企画開発など 【人文知識】原則4年制の大学で専攻していた学問と仕事の業務内容の関連性が必要。大学で専攻していない場合は、専門学校卒業又は10年の実務経験が必要。

もう少し詳しく説明するために、実際に弊所で申請させて頂き、許可を得た具体例(業界・仕事内容)の一部を以下に挙げます。


  • 製造業や商社で、海外からの材料仕入先や海外の販売先との「貿易事務・通訳翻訳業務」及び、での展示会出展時の通訳翻訳業務
  • IT企業(ソフトウェア)で、海外への販路拡大のための「通訳・翻訳業務」
  • 建設業・製造業での「CAD設計業務」
  • IT企業(システム開発)での「システムエンジニア」
  • 不動産会社での「企画開発」

従来は、概ね上記のような仕事内容でないとなかなか許可されず、飲食店(レストラン等)の接客、宿泊(ホテル)の接客や清掃、小売店での接客、製造業の現場作業員を仕事内容として、外国人留学生を正社員として雇用することができませんでした。

※上記のパターンで、外国人留学生を雇用し、留学ビザから就労ビザへ変更申請する際の流れについては、「留学ビザ→就労ビザへの変更申請の記事」を、従来の就労ビザ申請で留学生を雇用される企業様は、「技術・人文知識・国際業務ビザの記事」をご参照ください。

【新設】留学生の就職支援「特定活動ビザ」で雇用する方法

それでは、2019年5月に新設された、留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動ビザ」について解説いたします。

この留学生の就職支援「特定活動ビザ」を活用すると、飲食店(レストラン等)・宿泊業(ホテル・旅館)・小売店(百貨店や量販店等)の接客スタッフ、製造業の現場作業員の仕事内容で、外国人留学生を正社員雇用することができます。
まず業種別・仕事内容別に解説する前に、共通となっている留学生の審査要件を見ていきましょう。


【留学生の就職支援「特定活動ビザ」の審査要件】

  1. 日本の大学を卒業、又は大学院を修了していること(新卒採用の場合は見込みでOK)
  2. 日本語能力試験N1、又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上

つまり、「日本の大学を卒業(見込み)」で且つ、「日本語能力試験N1(BJTなら480点)」であれば、飲食店(レストラン等)・宿泊業(ホテル・旅館)・小売店(百貨店や量販店等)の接客スタッフ、製造業の現場作業員の仕事内容で、外国人留学生を正社員雇用することができます。なお、大学(又は大学院)で「日本語」を専攻していれば、2.の試験合格要件は不要です。

ですので、専門学校・日本語学校・海外の大学卒業など、日本の大学を卒業されていない場合は対象外となりますのでご注意ください。それでは、各業界で別で説明いたします。
それでは、具体的に業種別・仕事内容別で留学生の就職支援「特定活動ビザ」が活用できるパターン例を見ていきましょう。

(ア)飲食店(レストラン等)の接客スタッフ

飲食店(レストラン等)で接客スタッフとして外国人を正社員雇用するパターンです。これまでは、留学生のアルバイト(資格外活動)で週28時間以内に限られ、本業(正社員)としては雇用することができませんでした。しかし、上記の要件を満たしている外国人留学生は飲食店(レストラン等)でホールスタッフなどの接客業務を行うことができるようになりました。

注意点としては、「飲食店内で、外国人客(が来店した際は)通訳を兼ねて接客業務を行うこと。そして、日本人客に(日本語で)接客業務を行うこと。」とされています。つまり、日本人客に(日本語で)接客業務を行うだけでなく、外国人客が来店した際はその語学を活かして通訳業務もしてくださいね、ということが言えます。また、厨房での皿洗いや掃除だけを業務とするのはNGですよ!ということが明記されており、あくまでも飲食店内の接客業務(日本人客には日本語で接客、外国人客には通訳)がメインですよ!ということですのでお気をつけください。この要件を満たしていれば、レストラン・居酒屋などの飲食店での接客業務を行うことができます。

なお、外国人の方を「飲食店の接客スタッフして正社員雇用する詳細の記事」をご参照ください。

(イ)製造業の現場作業員(製造ラインスタッフ)

次に製造業の現場作業員(製造ラインスタッフ)として外国人材を正社員雇用するパターンです。これまでは製造業の現場作業で外国人材を雇用するのは原則不可でしたが、留学生の就職支援の「特定活動」を活用すれば、製造ラインスタッフとして現場作業ができるようになりました。

但し、注意点として、工場の製造ラインで,日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ,本人も製造ラインに入って業務を行うものことはOKですが、製造 ラインで指示された作業にのみ従事だけではNGだということです。

つまり、日本語力を活かし、同じ会社で働く技能実習生や外国人従業員の通訳を兼ねてくださいということです。よって、自社に外国人従業員がいない企業様は許可が難しい可能性がありますのでお気をつけください。

なお、「外国人の方を製造業の現場作業員(製造ラインスタッフ)して正社員雇用する詳細の記事」をご参照ください。

(ウ)宿泊業(ホテル・旅館)の接客スタッフ

みっつ目は、ホテル・旅館などの宿泊業で外国人材を正社員雇用するパターンです。昨今は、外国人観光客が増加し、毎日大勢の外国人の方が、ホテル・旅館に宿泊しています。これまでは、宿泊客の多くが外国人の方であるホテル・旅館で、通訳・翻訳業務を行うのであれば、既存の「技術・人文知識・国際業務ビザ」を活用することができました。しかし、外国人の宿泊客が少ない場合、主たる業務と出来ず、許可が得られにくい・客室の清掃を仕事内容とすることはできませんでした。

しかし、留学生の就職支援の「特定活動」を活用すれば、ホテル・旅館等の宿泊業の接客業務で、外国人材を正社員雇用できるようになりました。

但し、注意点として、宿泊客への接客や清掃業務だけでなく、自社ホテル・旅館のホームページの外国語対応等の翻訳業務,外国人宿泊客への通訳,他の外国人従業員への指導も行うことが求められます。客室の清掃にのみ従事することはNGですよ!と記載されているのでご注意ください。

(エ)小売店の接客スタッフ

よっつ目は、百貨店や量販店、コンビニなどの小売店における接客スタッフとして、外国人材を正社員雇用するパターンです。飲食店・宿泊業(ホテル・旅館)と同様に、これまでは小売店の接客スタッフは、原則外国人留学生のアルバイト(資格外活動)で週28時間以内に限られ、本業(正社員)としては雇用することができませんでした。しかし、上記の要件を満たしている外国人留学生は小売店(百貨店・量販店・コンビニ等)の接客業務を行うことができるようになりました。

こちらの注意点としては、来店客との接客業務、商品の陳列や店舗の清掃、仕入れや商品企画等などだけでなく、通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うことが求められます。
商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事するのはNGですのでご注意ください。

(オ)その他の留学生の就職支援「特定活動ビザ」の活用パターン

その他の方法で留学生の就職支援の「特定活動ビザ」を活用するパターン例としては、タクシードライバー、介護スタッなどが挙げられます。タクシードライバーであれば、外国人観光客に観光案内をする、介護スタッフであれば、自社の外国人従業員や外国人利用客への通訳業務を兼ねるなどの要件が必要となります。

飲食(レストラン等)、製造ラインスタッフ、宿泊(ホテル・旅館)、小売(百貨店・量販店等)も同様ですが、留学生の就職支援「特定活動ビザ」の仕事内容としては、接客業務、清掃業務、現場作業を行ってもよいか、「語学力(日本語と母国語)を活かした業務も兼ねること」が求められます。

よって、留学生の就職支援の「特定活動ビザ」を取得するためには、この点を十分に説明することが重要になります。
※具体的な参考事例は、留学生の就職支援に係る特定活動ビザのガイドラインから確認することが出来ます。

「留学ビザ」から「留学生の為の特定活動ビザ」への変更申請の準備と流れ

外国人留学生が「留学ビザ」から「就労ビザ」への変更申請を行う場合、概ね3~4ヶ月前には準備をし、2~3ヶ月前には大阪入国管理局へ変更申請した方が良いです。昨年(2018年)の新卒採用の例ですと、12月1日より大阪入国管理局では新卒採用の留学ビザから就労ビザへの変更申請を受け付けてくれていました。外国人の方の採用決定から就労ビザを取得するまでの目安の期間とおススメするスケジュールは以下の通りです。

就労ビザの申請代行の流れ

  1. 採用する外国人留学生の経歴、採用予定の職種とビザ(在留資格)の適合性のチェック
    ここまで無料相談可

  2. (申請代行業務を受任後)各種提出書類の作成・必要書類の収集

  3. 大阪入国管理局への変更申請代行

  4. 審査員との応対・追加書類の提出(卒業証明書を追って出す場合は入手次第提出)

  5. 不許可時の対応(無償で大阪入国管理局へ再申請代行を行います)

  6. 留学ビザから就労ビザの変更許可

弊所でご支援できること

クレアスト行政書士・中小企業診断士事務所は、大阪を始めとした関西一円で、日本で働きたい外国人留学生の就労ビザへの変更申請を得意としている申請取次行政書士事務所です。(※主に大阪入国管理局管轄である滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,和歌山県を承っております。)

外国人留学生を雇用する際、不許可にならないよう専門家に支援して貰いたい、数十時間かかる変更申請手続きを丸投げしたいという中小企業様向けに、事前に無料相談を受けた上で変更申請代行させて頂いてます。
なぜなら、許可される可能性のない案件を受任して、双方にとって時間と費用のロスにならないようにするためです。
留学ビザから就労ビザへの変更申請代行をご検討の大阪周辺の中小企業様は、お気軽に事前無料相談/見積依頼をご活用ください。
なお、ご依頼時の料金体系は、「クレアスト行政書士事務所の料金体系」。よりご確認ください。

外国人留学生の就労ビザを申請する前に

いかがでしたでしょうか。
現状、外国人留学生の就職率は約30%と低い一方で、就労ビザを取得し日本で就職したいと思っている留学生は65%近くに上り、大きく乖離しています。この問題を解説するために、今回の入管法改正で、外国人留学生が、飲食店・宿泊業(ホテルや旅館)・小売店での接客スタッフ及び、製造業での現場作業員(製造ラインスタッフ)として就労ビザ(特定活動ビザ)を取得することができるようになりました。人材不足でお悩みの中小企業様は、バイタリティがあり、語学力もある外国人材を活用できるチャンスです。しかし、就労ビザの相談や申請代行する専門家の技量により、許可されるか否かは大きく関わってきます。スムーズに取得するためにも信頼できる専門家にご相談し、申請代行して貰うことをお勧めいたします。留学生の就職支援「特定活動ビザ」や既存の就労ビザを活用して、外国人留学生を雇用したいとお考えの中小企業様はクレアスト行政書士事務所にご相談ください。

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