技能ビザは、外国料理の調理師(コックさん)、外国特有の建築様式を持つ大工、貴金属の技師、ソムリエ、スポーツトレーナー、パイロットなどの仕事をする外国人が日本で働くためのビザです。
よくある事例としては、インド・ネパール料理、中華料理、ベトナム料理などの「外国料理の調理師(コックさん)」や、キックボクシング・ムエタイ、フィットネスジムのトレーナー・テニスのコーチなどの「スポーツ指導者」して働くために技能ビザを取得するケースがあります。
技能ビザは、原則実務経験が求められるため、①在籍期間証明書などで証明できるか、②証明書の信ぴょう性は確かであるかが許可取得において重要なポイントです。
このページでは、調理師(コックさん)やスポーツ指導者などを中心に、技能ビザで働くことができる職種、審査基準、注意点、興行ビザや特定技能ビザとの違いなどを解説しています。
技能ビザの具体的な職種例と審査基準は?
外国人調理師(コックさん)として働きたい場合
はじめに、インド・ネパール料理、中華料理、ベトナム料理などの「外国料理の調理師(コックさん)」として、技能ビザを取得するための要件を解説いたします。
入管法には以下の記載があります。
一 料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で、次のいずれかに該当するもの(第九号に掲げる者を除く。)
イ 当該技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者
ロ 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定附属書七第一部A第五節1(c)の規定の適用を受ける者
上記のイに記載がある通り、技能ビザを取得することができる外国人調理師は、実務経験が10年以上必要です。※但し、タイの場合は5年です。
そして、その10年間(タイの場合は5年)働いたという証明書(在籍期間証明書)を、元勤務先(又は現在の勤務先)に書いて貰われければなりません。
許可を目指す第一ステップとしては、元勤務先(又は現在の勤務先)に、在籍期間証明書(10年以上働いた証明書)を書いてもらうことです。
他国料理を提供する調理師は認められません
実務経験が10年以上あれば、技能ビザの要件を満たすことはできますが、母国料理の調理師(コックさん)でないと許可は下りません。
例えば、中華料理店で、ベトナム人(ベトナム料理10年以上の実務経験のある方)を採用することはできません。
但し、インド料理とネパール料理は同じカテゴリなので、ネパール人(ネパール料理10年以上の実務経験のある方)がインド料理の調理師として働くことはできます。
実は、日本にあるインド料理店は、インド人よりネパール人の調理師の方が多いくらいです。
スポーツ指導者として働きたい場合
次に、キックボクシング・ムエタイ、フィットネスジムのトレーナーやテニスのコーチなどの「スポーツ指導者」して、技能ビザを取得するための要件を解説いたします。
入管法には以下の記載があります。
八 スポーツの指導に係る技能について三年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む。)を有する者若しくはこれに準ずる者として法務大臣が告示をもって定める者で、当該技能を要する業務に従事するもの又はスポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの
上記の通り、実務経験が3年以上必要です。
実務経験3年は、スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及びプロスポーツ選手として報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含めてもOKです。
もし、実務経験が3年以上なくても、スポーツの選手としてオリンピック大会,世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある場合は認められます。
調理師・スポーツ指導者以外で技能ビザに該当する職種
最後に、技能ビザに当てはまる調理師・スポーツ指導者以外の職種についてみてみましょう。
入管法には以下の記載があります。
二 外国に特有の建築又は土木に係る技能について十年(当該技能を要する業務に十年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合にあっては、五年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築又は土木に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
三 外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
四 宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
五 動物の調教に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
六 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について十年以上の実務経験(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
七 航空機の操縦に係る技能について二百五十時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法 (昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項 に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの
九 ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能について五年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
イ ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という。)において優秀な成績を収めたことがある者
ロ 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限されているものに限る。)に出場したことがある者
ハ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者
ここでは、ひとつずつの解説は割愛させて頂きますが、それぞれ実務経験が必要です。
実務経験が10年以上必要である職種が多いことはご認識いただければと思います。
技能ビザを取得するための注意点
(ア)実務経験証明書の信ぴょう性について
「実務経験が有り、必要な年数を満たしており、証明することもできる」場合でも、不許可になる場合もあります。
それは、実務経験証明書の信ぴょう性がない場合です。
具体的には、実務経験証明書(在籍期間証明書)を、偽造して申請したら犯罪ですが、採用予定の外国人から受け取った、実務経験証明書(在籍期間証明書)が不許可となってから、はじめて偽造と発覚するケースがあります。
また、実務経験年数は正しくても、適法に会社経営していなくて(税金を払っていない等)、その期間は実務経験年数に含めて貰えないケースもあります。
技能ビザの審査には、在籍していた会社を調査したり、電話で問い合わせしたりするなどの細かい審査がありますので、事実確認をして頂くことをお勧めいたします。
(イ)給与について
次は、外国人の給与に関することです。
こちらは、就労ビザの注意点の生地でも解説いたしましたが、採用する外国人の給与を日本人と区別することは認められず、”日本人の報酬と同等以上”の給与を支払う必要があります(外国人だからと言って給料を安くすること)。
就労ビザ申請で、会社側の注意点、審査基準、期間等の概要について解説しています。
”日本人の報酬と同等以上”とは、一律に金額が決まっているわけではなく、個々の企業の賃金体系を基礎に日本人と同等以上であるか、また同業他社等の同種同職の賃金を参考にして日本人と同等額以上であるかで判断されます。もちろん、アルバイトのような扱いにして、日雇いや月契約などはNGです。
賃金規程や、全従業員の賃金台帳の提出を求められることもありますので、ご注意ください。
(ウ)採用する企業(契約機関)について
採用する企業は、技能ビザに該当する職種を営んでいる必要があります。
”中華料理店で、ベトナム料理も提供するので、ベトナムの調理師を雇用します”等は信ぴょう性が低く、不許可になる可能性があります。
新規事業として、別の業態の会社が、”中華料理店をオープンします”、”スポーツジムをオープンします”といった場合は、お店の写真、料金表、メニュー等、実態を証明できる書類を提出しないと許可を取得することは難しいのが現状です。
また、採用する企業は、適正な事業を行っており、決算内容から見て事業の継続性がある必要があります。債務超過の会社や資金繰りの厳しい会社だと許可を得ることは難しいです。
技能ビザ取得後の注意点
在留期限に注意しましょう
技能ビザも他の多くの就労ビザと同じで、最長で5年で、3年、1年、3ヶ月のうちのいずれかの在留期間が付与されます。
在留期限が切れる3ヶ月前から満了日までに在留資格更新許可の手続きが必要となり、期限が切れると不法滞在者となるので注意が必要です。
詳しくは別の記事で解説していますので、ご参考ください。
家族滞在ビザで妻(配偶者)や子を呼ぶ方法・必要な要件・注意点・必要書類・許可取得後に日本で働く方法、更新・変更申請等について、就労ビザに強い行政書士が詳しく解説しています。
家族滞在ビザで、技能ビザの外国人が配偶者(妻)や子供を呼ぶ
技能ビザを取得した外国人は、配偶者(妻)や子供を呼び、一緒に暮らすことができます。
また、日本に来てから、配偶者(妻)の方が、資格外活動許可を取得すれば、アルバイトとして一緒に働くことも可能です(但し、週28時間以内等の要件があります)。
詳しくは、別の記事で解説していますので、ご参考ください。
【転職あり・なし別】就労ビザの更新時の会社の対応方法・必要書類・注意点などを解説しています。
技能ビザと興行ビザの違い
スポーツ指導者の場合、よく興行ビザと比較されることがあります。
興行ビザとは、プロスポーツ選手やプロスポーツの監督・コーチなどの指導者に与えられるビザ(在留資格)です。
プロ野球やJリーガー等のプロスポーツ選手は興行ビザ(2号)に該当し、その監督・コーチについても興行ビザ(2号)に該当すると思われます。
技能ビザなのか興行ビザになるのかは,興行的要素の度合いを見て判断されます。
なお、アマチュアスポーツ選手(及びその家族)の場合は、特定活動ビザに該当します。
技能ビザと特定技能ビザとの違い
技能ビザとよく混同されるのが、特定技能ビザです。
特定技能ビザは、2019年に新設された比較的新しいビザ(在留資格)で、人手不足が深刻な12分野において現場作業員として働くためのビザです。
特定技能ビザは、①技能実習生2号以上を終える、②「日本語能力のテスト」及び「業種別の技能試験」に合格するのいずれかが審査要件となります。
詳しくは、別の記事で解説していますのでご参考ください。
「特定技能ビザ」の概要と申請について、審査要件や対象の職種を詳しく解説しています。
技能ビザの申請代行(取次)はお任せください(大阪から全国対応可)
いかがでしたでしょうか。
この記事では、調理師(コックさん)やスポーツ指導者などを中心に、技能ビザで働くことができる職種、審査基準、注意点、興行ビザや特定技能ビザとの違いなどを、詳しく説明してきました。
「技能ビザ」を取得できるかどうかは、雇用する日本企業に取っても外国人の方に取っても、今後に大きく影響してきます。そして、相談や申請代行(取次)する専門家の技量も大きく関わってきますので、信頼できる行政書士などの専門家にご相談することをお勧めいたします。
「技能ビザ」の申請をご検討の会社様は、お気軽にクレアスト行政書士事務所までお尋ねください。オンライン申請、WEB会議等を駆使し、大阪から全国の中小企業様をサポートしています。※弊所は、大阪入国管理局管轄区域に事務所を有していますが、在留申請オンラインシステムで全国のビザ申請代行(取次)に対応しています。