「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」は、最も有名な就労ビザ(在留資格)の一つです。
2018年末時点では約18.9万人だったのに対し、2023年末時点では36万人超と過去5年で約1.9倍にも急増しています。

以前(2015年まで)は、「技術(理系)」と「人文知識・国際業務(文系)」と区別されていましたが、グローバル化に伴い、「技術・人文知識・国際業務」に一本化されました。
この「技術・人文知識・国際業務」は、申請要件を満たしている場合であっても、仕事内容(職種)や、説明資料の内容によっては不許可になるリスクがあります。

この記事では、「技術・人文知識・国際業務ビザ」で、できる仕事(職種一覧)、採用時の注意点、申請パターン、許可・不許可の事例等を詳しく解説していきます。

技術・人文知識・国際業務ビザ:できる仕事と職種一覧

それでは、まずはじめに、技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)は、どのような仕事ができるか(職種が該当するか)、ざっくりと具体例をみていきましょう。

技術・人文知識・国際業務ビザ:できる仕事・職種例
  • メーカー技術者(設計・エンジニア等)の仕事
  • IT企業でシステムエンジニア・プログラマーの仕事
  • 貿易事務、海外取引業務、翻訳通訳の仕事
  • 商品企画開発・土地開発・サービス開発の仕事
  • 語学教師の仕事

一般的には、理系の大学等を卒業している外国人は技術者(設計・エンジニア)やプログラマーに、文系の大学等を卒業している外国人は貿易事務、海外取引業務、商品開発等の仕事に就くケースが多いです。

「技術」「人文知識」「国際業務」それぞれのできる仕事(職種一覧)

ざっくりとしたできる仕事(職種)を記載しましたが、「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」の審査基準は、「技術」「人文知識」「国際業務」と3つに分かれており、細かく決まっています。
それでは、それぞれどのような審査基準なのか見ていきましょう。

「技術」=自然科学の分野(理系の分野)に属する知識を必要とする業務

ひとつ目は、「技術」=理系の専門職の仕事です。
入管法には以下のようにあります。

一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。

イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。

注:「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」より

一番多いパターンは、理系の学部を出ていて、学んだこと(大学の専攻等)と関連する仕事に就くパターンです。
※もし、大学(又は専門学校)を卒業していない場合は、10年間の実務経験があり、専門的な能力があることを証明できれば、審査要件を満たすことが可能です。

では、大学等の理系の学部例を見てみましょう。

理系の学部一覧(例)

建築学|数理科学|物理科学|化学|生物科学|地質科学|地理学|統計学|情報学|基礎工学|応用物理学|機械工学|電気工学|電子工学|情報工学|土木工学|金属工学||応用化学|造船学|計測・制御工学|化学工学|航空宇宙工学|原子力工学|経営工学|農学|農芸化学|社会医学|病理科学|歯科学|薬科学など

次にどのような仕事ができるか、職種一覧を見ていましょう。

「技術」できる仕事・職種一覧(例)

ソフトウェアエンジニア|システムエンジニア|コンピュータプログラマー|ゲームプログラマー|技術開発にかかるプロジェクトマネージャー|設計技術者|開発技術者|自動車の技術開発|バイオテクノロジーの技術開発|建設技術の研究や開発・調査|土木・建築における研究開発・解析・構造設計業務など

「人文知識」=人文科学の分野(文系の分野)に属する知識を必要とする業務

ふたつ目は、「人文知識」=文系の専門職の仕事です。
こちらも、一番多いパターンは、文系の学部を出ていて、学んだこと(大学の専攻等)と関連する仕事に就くパターンです。
※もし、大学(又は専門学校)を卒業していない場合は、10年間の実務経験があり、専門的な能力があることを証明できれば、審査要件を満たすことが可能です。

では、大学等の文系の学部例を見てみましょう。

文系の学部一覧(例)

会計学|語学|文学|哲学 |教育学(体育学を含む)|心理学|社会学|歴史学|地域研究|基礎法学|公法学|国際関係法学|民事法学 |刑事法学|社会法学|政治学|経済理論|経済政策 |国際経済|経済史|財政学・金融論|商学|経営学|経済統計学など

次にどのような仕事ができるか、職種一覧を見ていましょう。

「人文知識」できる仕事・職種一覧(例)

会計業務、経済アナリスト、財政アナリスト、労務管理、法律業務、貿易業務など

「国際業務」=外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務

最後は、「国際業務」=外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を要する仕事です。
少々難しい表現ではありますが、技術・人文知識・国際業務ビザの中でも、「国際業務」に該当するケースが非常に多く、「貿易事務」「海外取引業務」「翻訳・通訳」などの仕事が該当します。入管法を見てみましょう。

二 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。

注:「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」より

「国際業務」は、「技術」「人文知識」と異なり、学部と職種の関連性は明確には記載されていません。
しかし、一定の日本語能力が求められるため、外国人留学生として日本の大学(文系の学部)等を卒業しているか、日本語能力検定の資格を持っているケースが多いです。
※もし、大学を卒業していれば実務経験不要、卒業していなければ実務経験が3年必要です。

では、どのような仕事ができるか、職種一覧を見ていましょう。

「国際業務」できる・職種一覧(例)

海外営業、貿易事務業、翻訳通訳業、語学学校の教師、語学の指導、コピーライティング、広報、宣伝または海外取引業務、服飾もしくは室内装飾にかかるデザイン、商品開発など

注意点としては、海外取引業務を行うのであれば、(母国語と)日本語が話せる等のスキルがないと仕事にならないため、このあたりを審査で問われると思っていただければと思います。

外国人を採用するとき、会社が気をつけること

(ア)「学歴又は職歴」と「できる仕事(職種)」を審査要件を満たすか確認する

上記の審査基準とできる仕事(職種)を踏まえ、採用予定の外国人の学歴又は職歴を確認します。
①学歴で審査要件を満たす場合は、最終学歴は大卒(又は専門卒)であるか、②職歴で審査要件を満たす場合は、実務経験年数は何年あるかを確認します。
そして、「技術」「人文知識」であれば「学歴又は職歴」と「できる仕事(職種)」と関連性があるか、
「国際業務」であれば「学歴又は職歴」が要件を満たしており、できる仕事(職種)に見合った能力(日本語能力等)があるかを確認し、審査要件を満たすことを確認しましょう。

(イ)日本人と同等の待遇(給与水準)とする

外国人だからという理由だけで、日本人と給与に差をつけることは認められません。
学歴、能力で待遇(給与水準)に差をつけることはよくても、国籍だけで差をつけてしまうと許可が下りません。
入管法にも、下記のように記載されています。

三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
注:「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」より

日本人の報酬と同等以上とは、一律に金額が決まっているわけではなく、個々の会社の賃金体系を基礎に日本人と同等以上であるか、また同業他社等の同種同職の賃金を参考にして日本人と同等額以上であるかで判断されます。
つまり、外国人が大卒であれば日本人大卒者の賃金を、専門職・研究職であればその会社の日本人専門職・研究職の賃金を参考にされます。
これらを考慮した上で、雇用契約書(又は労働条件通知書)を作成する必要があります。

(ウ)会社の財務状況等が著しく悪くない(事業の安全性と継続性がある)

外国人を採用する会社は、事業が適正に行わており、会社の財務状況等が著しく悪くないことが求められます。
審査では、提出された決算書や事業内容説明資料等で、会社の安定性および継続性や、適正に事業を行っているか等を審査されることを知っておきましょう。

その他の注意点については、就労ビザ全般申請にいえることです。適宜、以下の記事をご参考ください。

技術・人文知識・国際業務ビザの主な申請パターン

(ア)海外から呼び寄せる=新規認定申請(在留資格認定証明書交付申請)

母国にいる外国人を日本で働くために呼ぶ申請を、新規認定申請(在留資格認定証明書交付申請)といいます。
就職する会社の海外支店、海外の取引先、知り合いなどを通じて知り合った外国人を、「技術・人文知識・国際業務ビザ」で呼び寄せるパターンが挙げられます。

(イ)日本にいる(別の在留資格を保有する)外国人を雇用する=変更申請

変更申請とは、別の在留資格から、「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」に切り替えることを言います。

「留学ビザ」から「技術・人文知識・国際業務ビザ」に変更する

最も多いのが、日本にいる外国人留学生が、留学ビザ(在留資格)から「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」に切り替えるパターンです。詳しくは、個別記事に書いていますので、ご参考いただければ幸いです。

「家族滞在ビザ」から「技術・人文知識・国際業務ビザ」に変更する

「家族滞在ビザ(在留資格)」から「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」に切り替えるパターンもあります。
「家族滞在ビザ」は、就労ビザで働く方のご家族として、日本に滞在する在留資格です。
「家族滞在ビザ」で入国したのち、就職することになり、「技術・人文知識・国際業務ビザ」へ変更するパターンも多くはありませんが時々あります。

更新申請する際に気をつけること

「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」を取得したあとも気を付けなければならないことがあります。
このビザの在留期間は、原則1年、3年、5年です。期限が来たら、更新申請が必要です。
更新申請は転職あり・なしで対応が異なるので、それぞれ解説していきます。

転職なしの更新

転職なしの更新の場合は、新規申請した通りの内容(給与・仕事内容等)で働いていて、著しく会社の財務状況が悪い状況(事業の継続性に問題がある状況)になければ、更新許可は下ります。
更新申請する際は、新規申請した内容と整合性があるかどうかを確認しましょう。

転職ありの更新

転職している場合は注意が必要です。
前の会社で新規申請した仕事内容(職種)と異なる仕事に就かせている場合は、不法就労になる可能性があり、更新不許可になる恐れもあります。前の会社で新規申請した時の内容を確認したけれどわからなかった、前の会社の仕事内容(職種)と異なる仕事内容かもしれないといった場合は、行政書士等の外部専門家に相談することをお勧めいたします。
更新申請の必要書類や注意点は別途、下記の記事にまとめていますので、ご参考ください。

許可・不許可の事例

許可された事例

「技術」に該当する事例

本国において工学を専攻して大学を卒業し、ゲームメーカーでオンラインゲームの開発及びサポート業務等に従事した後、本邦のグループ企業のゲーム事業部門を担う法人との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、同社の次期オンラインゲームの開発案件に関するシステムの設計、総合試験及び検査等の業務に従事するもの。
注:「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」より

上記の許可事例では、①工学部(理系)専攻で母国の大学を卒業、②母国でオンラインゲームの開発業務に従事した経歴を持つ外国人が、「日本のゲーム関連会社で、オンラインゲーム開発業務に従事する」もので、「技術」に該当し許可されたと理解できます。

「人文知識」に該当する事例

本国において会計学を専攻して大学を卒業し、本邦のコンピュータ関連・情報処理会社との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、同社の海外事業本部において本国の会社との貿易等に係る会計業務に従事するもの。
注:「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」より

上記の許可事例では、会計学(文系)専攻で母国の大学を卒業した経歴を持つ外国人が、「コンピューター関連会社の海外事業本部で、母国の会社との貿易に関する会計業務に従事する」もので、「人文知識」に該当し許可されたと理解できます。

「国際業務」に該当する事例

本国の大学を卒業した後、本邦の語学学校との契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、語学教師としての業務に従事するもの。
注:「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」より

上記の許可事例では、母国の大学(専攻不明)を卒業した外国人が、「語学教師の業務に従事する」もので、「国際業務」に該当し許可されたと理解できます。但し、情報量が少ないので不明な部分もありますが、語学教師として働くことのできるスキル(一定の日本語能力や経験)などがあったと推測できます。

不許可になった事例

仕事内容が要件を満たしていないため不許可

教育学部を卒業した者から、弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され、弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが、当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。
注:「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」より

上記の不許可事例では、教育学部を卒業した外国人が、「弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事する」ものであるが、「技術」「人文知識」「国際業務」のいずれにも審査要件を満たしていないため、不許可になったもの。

実際に従事する仕事内容が存在しない(殆どない)ため、不許可

経済学部を卒業した者から、会計事務所との契約に基づき、会計事務に従事するとして申請があったが、当該事務所の所在地には会計事務所ではなく料理店があったことから、そのことについて説明を求めたものの、明確な説明がなされなかったため、当該事務所が実態のあるものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行うものとは認められないことから不許可となったもの。
注:「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」より

上記の不許可事例では、経済学部を卒業した外国人が、「会計事務に従事する」ものであるが、実際は会計事務所ではなく料理店であったことから、会計業務の仕事が存在しない(殆どない)ため、不許可になったと推察されます。
そもそも、この場合は、虚偽申請の可能性が高く、逮捕される可能性もあるので、くれぐれも事実と異なることを書かないよう注意してください。

日本人と同等の待遇(給与)でないため不許可

日中通訳翻訳学科を卒業した者から、輸出入業を営む企業との雇用契約に基づき、月額17万円の報酬を受けて、海外企業との契約書類の翻訳業務及び商談時の通訳に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額20万円であることが判明したため、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けているとはいえないことから不許可となったもの。
注:「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」より

上記の不許可事例では、その会社の同等の業務を行う日本人の報酬が月20万円であるのに対し、外国人には月17万円の報酬としたため、日本人と同等の待遇(給与)でないため不許可になっています。申請時に、雇用契約書(又は労働条件通知書)を提出する必要がありますが、追加資料要望で、全員の賃金台帳等の提出が求められ発覚した可能性が考えられます。いずれにしましても、外国人だからといって待遇(給与)を下げるのはNGです。

技術・人文知識・国際業務を取得するまでの流れ

技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)を申請を行う場合、採用の3ヶ月前には進めておきたいところです。

当事務所へご相談頂く場合、就労ビザ申請の審査期間をご確認ください。

申請代行(取次)はお任せください(大阪拠点で全国対応OK)

いかがでしたでしょうか。
この記事では、「技術・人文知識・国際業務ビザ(在留資格)」で、できる仕事(職種一覧)、採用時の注意点、申請パターン、許可・不許可の事例等を詳しく説明してきました。
「技術・人文知識・国際業務」を取得できるかどうかは、雇用する日本企業に取っても外国人の方に取っても、今後に大きく影響してきます。そして、相談や申請代行(取次)する専門家の技量も大きく関わってきますので、信頼できる行政書士などの専門家にご相談することをお勧めいたします。

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