※この記事は、新在留資格「特定技能」で申請をご検討の企業様向けに書いています。
2018年6月の閣議決定によって進められてきた新在留資格「特定技能ビザ」の新設は、同年12月国会成立し、いよいよ今年2019年4月より、運用開始(施行)されます。
企業の経営者・幹部の方は、特定技能ビザの新設により、単純労働に近い職種の外国人を直接雇用できるという点で大きな注目を集めています。(※注:厳密にいえば後述する審査要件があり、単純労働者ではありません)
製造業や建設業では現場作業員を、ホテル宿泊業や外食産業では接客スタッフを、直接雇用することができるこの制度は、今後の企業経営を進めて行くうえで、有効な活用手段のひとつとなります。
そこで、今回の入管法改正により新設される新在留資格「特定技能ビザ」について、
「うちの会社は対象になるの?」
「どんな外国人の方が対象なの?」
など、疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
そこで、特定技能ビザについて、
知りたい!活用したい!と考えていらっしゃる中小企業様の視点で、わかりやすく解説します。
在留資格「特定技能ビザ」新設の背景は人手不足問題
そもそもなぜ、入管法は改正され、新たな在留資格を設置することになったのでしょうか?
・・・
それは、中小企業・小規模事業者を中心とした人手不足問題を解消するためです。
2018年時点で、約6,700万人いる日本の労働力人口は、2065年には4,000万人弱と現状から約4割減少、労働力参加率は現状の約60%から50%程度になると予想され、今後ますます人手不足になっていきます。
実際に、今回の特定技能ビザの新設に至った背景について、首相官邸の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の配布資料には、以下のように掛かれています。
中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており,我が国の経済・社会基盤の持続可能性を阻害する可能性が生じているため,現行の専門的・技術的分野における外国人材の受入れ制度を拡充し,一定の専門性・技能を有する外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある。
日本は現在、人手不足問題を解消するために、中小企業の生産性向上に対する補助金交付、女性の労働参加率向上などに取り組んでいますが、これらの取り組みだけでは解消できないと判断したため、外国人労働者のさらなる受け入れをするということが読み取れます。
企業と採用活動は切っても切れない問題であり、外国人労働者を有効活用することは、今後の経営戦略で重要な立ち位置を占めると言えます。
それでは、特定技能ビザを使うことが出来る会社(分野/業種)と対象外国人について見ていきましょう。
特定技能ビザで呼べる会社=分野(業種)は?
新在留資格「特定技能ビザ」はどのような企業が対象で、どのような外国人を呼ぶことができるのでしょうか?
・・・
それは、特に人手不足とされている分野であり、特定技能1号では14分野(業種)の企業が対象です。
※「特定技能1号」と「特定技能2号」がありますが、「特定技能1号」は後述の表の通り14分野(業種)で、「特定技能2号」は「建設」「船舶用工業」の2分野(業種)のみです。「特定技能2号」については、「特定技能1号」で5年就労した後に取得するビザであり、早くても2022年頃からなのでここでは割愛し、「特定技能1号」の説明のみをします。
閣僚会議の資料には、以下のように書かれています。
真に受入れが必要と認められる人手不足の分野に着目し,一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れるための新たな在留資格を創設する。
そして、”真に受入れが必要と認められる人手不足の分野”について、政府が発表した特定技能ビザ1号の14分野(業種)と受け入れ予定人数を以下の表にまとめました。
【特定技能ビザの対象となる14業種(分野)と受入見込み人数】
上記の14業種(分野)に属する企業が対象となりますが、14業種のうち8つの業種(分野)では業務区分が複数設定されています。
【特定技能ビザ14業種のうち、区分のある8業種】
上記の通り、8つの分野(業種)については複数の区分にわかれており、残りの6つの分野(業種)=介護・ビルクリーニング・自動車整備・宿泊・飲食料品・外食業については、区分は1つです。
ですので、まず、ご自身の会社が募集している職種が該当しているかどうかを確認しましょう。
こちらの区分は、首相官邸の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の配布資料に記載されているので併せて確認してみましょう。
なお、特定技能ビザで就労したい外国人は、この区分に該当する専門領域で一定の技能があるかの試験に合格する必要(但し、技能実習生2号を修了しているものは試験免除)があり、この点については後述しています。
特定技能ビザ1号の審査要件は?
さて、対象となる14分野(業種)と詳細の業務区分が分かった次に気になるのは、外国人の審査要件です。
新在留資格「特定技能ビザ1号」を取得し日本で就労したい外国人は、どのような要件を満たしている必要があるのでしょう。
・・・
それは、結論から言うと、「日本語能力のテスト」と「業種別の技能試験」の2つの試験に合格することです。
※但し、技能実習生2号を修了しているものは2つの試験共に試験免除
実際には、以下のように書かれています。
技能水準は,受入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識又は経験を有することとし,業所管省庁が定める試験等によって確認する日本語能力水準は,ある程度日常会話ができ,生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ,受入れ分野ごとに業務上必要な能力水準を考慮して定める試験等によって確認する。技能実習2号を修了した者は,上記試験等を免除。
では具体的に、2つの試験制度についてもう少し見ていきましょう。
1.日本語能力テスト
日本語能力を問うテストについては次の2つのうち、いずれかをクリアすればOKです。
- 「日本語能力判定テスト(仮称)」に合格すること
- 「日本語能力試験でN4以上取得すること
※注:但し、技能実習生2号を終えている外国人材は試験免除!!
上記の2つの試験のいずれかをクリアすれば、問題ありません。
※注:分野(業種)によっては上記以外の方法で日本語能力があることを示すことも認めています。
1つ目の日本語能力判定テスト(仮称)については、2019年4月から実施予定であり、次の8カ国で試験を実施する方針となっています。
※日本語能力判定テスト開催予定の8カ国・・・ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイ、ミャンマー、カンボジアの7カ国+1国(調整中)
一方、2つ目の日本語能力試験については、以前より実施されており、年2回実施しています。(2018年は7月と12月に実施)
また日本語能力試験は、日本国内だけでなく海外でも受験することが出来ます。
海外の開催場所については、日本語能力試験の海外の実施都市・実施機関一覧を確認することができます。
試験の難易度に関しては、日本語能力試験N4で良いとされているので、それほどハードルが高いわけではありません。(N1が一番難しく、N5が最も簡単です。詳しくは、認定の目安をご参考ください。)
2.業種別の技能試験
もう一つの試験は、2019年4月より、順次実施される予定の業種別(区分別)の技能試験を受け合格することが要件となります。
但し、特定技能ビザ取得に必要な試験を2019年4月から実施するのは、「介護業」「宿泊業」「外食業」の3つの分野のみであり、それ以外は随時実施していくとなっています。
なお、業種別の技能試験についても、技能実習生2号を終えている外国人材は試験免除!!になります。
3.試験の実施スケジュール
これまで述べてきた通り、日本語能力判定テスト(仮称)と分野(業務区分)別の技能試験は、「介護業」「宿泊業」「外食業」の3つの分野については2019年4月から実施されますが、その他の分野(業種)については、以下のスケジュールとなっています。
【特定技能ビザ取得に必要な実施試験の開催スケジュール】
ここで、「介護業」「宿泊業」「外食業」の3つの分野以外の会社にとっては、
「なんだ。当分使えないじゃん!」
と思われるかもしれませんが、ちょっと待ってください!!
「技能実習生2号」を修了していれば、2つとも試験免除となるんです!!
ですので、かつて自社で技能実習生として期間満了まで働いて、「期間満了で帰国せざるを得なかった。」「優秀なのでできれば継続して雇用したかった。」
という外国人の方がいらっしゃったら、声を掛けて見ては如何でしょうか?
既存の就労ビザとの違いは?在留期間は?
特定技能ビザの新設に伴い、既存の就労ビザとの区別はより一層、厳格化されていくと考えられます。
そして、使い分けを行っていくことも重要になってくると思われますので、就労ビザとの比較をしてみます。
特定技能 (1号) |
技術・人文知識・国際業務 | 技能 | 技能実習生 | |
在留期間 | 最長5年で更新不可 (「建設」「船舶用工業」の2分野を除き、5年後に帰国しなければならない。) |
1年、3年、5年 ※更新可能 |
1年、3年、5年 ※更新可能 |
1号=1年、2号=2年、3号=2年 これまでは3号修了後、帰国しなければならなかったが、特定技能で就労が可能に! |
審査基準 | 日本語能力に関するテスト及び分野別(業務区分別)試験に合格する(技能実習生2号以上を修了していれば試験免除) | 原則4年制の大学で専攻していた学問と仕事の業務内容の関連性が必要。 大学で専攻していない場合は、技術・人文知識については10年の実務経験が、国際業務については3年の実務経験が必要 |
調理師として働く場合は実務経験10年が必要(一部例外あり) | 技能実習計画を出し審査をクリアする(多くの中小企業が送出し機関と管理団体を通じて就労している) |
業務内容 | 現場作業OK 接客スタッフOK |
原則、現場作業はNG (状況によってはOKの場合もあるが原則NG) |
調理師の場合、母国料理の調理師としてのみOKで、他国の調理や接客・ホールスタッフはNG | 現場作業OK |
特定技能ビザの主な特徴としては、次の3つが挙げられます。
- 技術・人文知識・国際業務ビザでは該当しなかった製造業や建設業で現場作業員、ホテルでの接客スタッフとして就労できること
- 技能ビザでは該当しなかった飲食店の接客スタッフや母国ではない料理の調理スタッフとして就労できること
- 技能実習生として働いて貰う際に、支払っていた送出し機関への費用が発生しないこと
一方で、懸念事項としては、最長5年であり、「建設」「船舶用工業」の2分野を除き、特定技能2号への移行ができず、帰国せざるを得ないことが挙げられます。
そのため、技能実習生で5年+特定技能で5年の合計10年プランで計画されるケースも増えていくのではないかと考えています。
特定技能ビザの申請方法は?
1.企業側(=特定技能所属機関)の責務
特定技能ビザで外国人を雇用するためには、企業側(=特定技能所属機関といいます)の責務があります。
具体的には、特定技能ビザで雇用する外国人と締結する雇用契約書に入管法上で定める要件が盛り込まれた「特定技能雇用契約」を結ぶことや、
外国人の方が、「特定技能ビザ」の活動を、日本で安定的かつ円滑に行うことが出来るよう、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援を行うための計画=「1号特定技能外国人支援計画」を立てる必要があります。
2.在留資格認定証明書交付申請を行う
上記1で述べた「特定技能雇用契約書」や「1号特定技能外国人支援計画」のほか、「日本語能力テストに合格している証拠書類」及び「分野別支援の試験に合格している証拠書類」(技能実習生2号を終えている場合はその証拠書類)に加え、通常の就労ビザで申請している各種申請書類の提出が求められることになると想定されます。
特定技能ビザを取得するまでの流れ
特定技能ビザを申請を行う場合、技能実習生2号を終えているか否かで大きくに分けることができます。
技能実習生2号を終えていない場合は、上記で説明した2つの試験に合格することが先決ですので、事前に試験日程などを確認して計画を立てておきましょう。
なお、当事務所へご相談頂く場合、就労ビザ申請代行のご依頼をご検討の方へのページも併せてご確認ください。
特定技能ビザ申請をご検討の企業様へ
いかがでしたでしょうか。
今後、日本の労働人口減少が確実視されている中、特定技能ビザを取得できるかどうかは、企業に取っても外国人の方に取っても、今後に大きく影響してきます。
そして、相談する専門家の技量も大きく関わってきます。スムーズに取得するためにも最新情報の収集・研究をしている信頼できる専門家にご相談することをお勧めいたします。
大阪、京都、神戸で就労ビザの申請代行はクレアスト行政書士事務所までお尋ねください。
今後については、電子申請も加速化していくこともあり、大阪入国管理局管轄地域の「大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀」以外の遠方からのご相談につきましても対応しておりますので、お気軽にお尋ねください。
中小企業診断士/行政書士。製造業の営業職を経て、2015年に独立。行政書士業務は中小企業向けの就労ビザ・経営管理ビザの申請代行(取次)を得意としており、数多くのご依頼を通じてノウハウを蓄積。中小企業診断士業務は、ものづくり製造業やIT企業の経営コンサルティングや公的制度活用(補助金申請や各種認証取得等)のサポートに従事。