外国人労働者が入社する際は、確認事項や各種手続きが多く、特に、転職入社の場合は、入社前に現保有の在留資格(在留カード)の確認と注意点を把握することが重要です。

入社前の確認不足や入社後の手続き漏れがあると、会社側が不利益を被る可能性があるため、リスクを未然に防ぐための準備が必要不可欠です。

この記事では、外国人労働者の転職入社・新規入社時に、会社が行うべき確認事項・必要な手続きについて、入社前・入社後に分けて詳しく解説します。外国人労働者の採用(入社)手続きで困らないよう、ポイントを押さえていきましょう。

(既に在留カードを持っている外国人の)入社前に確認しておくこと

入社前には、①外国人労働者が保有する在留資格(在留カード)を確認し、②入社後の就労予定の職種に従事可能かを確認することが重要です。

(ア)外国人が保有する在留カード・在留資格を確認

まず、外国人が持っている在留カードを確認し、在留資格・在留期間を確認しましょう。

右の写真の通り、在留カードには、在留資格・在留期限が記載されており、この情報を元に、外国人本人が有効な在留資格を保有しているかを確認することができます。

例えば、現在保有する在留資格が「技術・人文知識・国際業務」である場合、その範囲内の業務でなければ就労が認められません。

内定を出す際に、在留カードのコピーを取らせてもらい、会社で保管しておくことをお勧めします。

(イ)在留カードが本物であるか(偽造でないか)を確認

近年、在留カードの偽造が増加しているので注意が必要です。入社前には、在留カードが本物であるかの確認をしておくことが無難です。
入国管理局の公式サイトには、在留カードの真偽を確認するためのガイドラインがあります。
疑わしい点がある場合は、入国管理局に問い合わせるか、本人に協力を仰ぎ、詳細な確認を行いましょう。  

(ウ)前職(転職前)の職務内容・学歴や職歴を確認

外国人が保有している在留資格(在留カード)を引き続きの維持し働くためには、前職の職務内容が、入社後働く予定の職種と同じか否かも、重要な判断基準となります。

特に「技術・人文知識・国際業務」のような資格では、学歴又は職歴(大学等の専攻が仕事内容との関連性があるか)も審査対象になるため、前職の職務内容・学歴は、しっかり確認しておきましょう。

例えば、入社後のポジションを技術職(設計エンジニア)と想定している場合には、過去の職歴が技術分野であるか、関連する学位を保有しているか確認することで、該当性を確認することができます。

(エ)在留資格ごとの審査要件を確認

上記の通り、①現保有の在留カード、②在留カードが本物であること、③前職の職務内容・学歴の3点を確認し、「前職と同じ仕事内容に従事・在留資格が仕事内容と合致している・在留カードも本物」であれば、引き続き就労可能と判断することができます。

在留資格の種類・要件の確認や、就労ビザを持っていない外国人(留学生の就職を含む)については別記事で詳しく書いていますのでご参考ください。

※在留資格の範囲外の業務に従事させることは、入国管理法違反となるため注意が必要です。特に、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」など、職務と資格が一致していないと、外国人労働者が違法な状態に陥るリスクがあります。

外国人の入社後に行う手続き

外国人労働者の入社後には、外国人特有の手続きがいくつか必要です。これらの手続きを正確に行っていきましょう。

(ア)正社員等を採用する場合(転職・新規入社共通)

外国人を正社員などとして採用する場合には、(日本人同様)入社時に雇用保険への加入が義務となります。

右の画像は、雇用保険の被保険者資格の取得届です。
赤枠の箇所に、「被保険者氏名」「在留期間」「就労区分」「国籍及び国籍コード」「在留資格及び在留資格コード」を記載する欄があります。

これらの項目を記載し届出を行えば、後述する外国人雇用状況の届出を別途行う必要はありません。

雇用保険への加入手続きを済ませることで、法律の規定に基づく雇用届出が完了するため、漏れなく対応しましょう。

(イ)留学生等のパートアルバイトを採用する場合(転職・新規入社共通)

留学生など、在留資格が「留学」である場合、資格外活動許可【注】があれば、週20時間以内のパートタイムとしての雇用が認められています。
雇用保険への加入は不要ですが、外国人雇用状況の届出を行う必要があります。

届け出方法は、下記の厚生労働省公式サイト「外国人雇用状況の届出について」に進んでいただき、”2.雇用保険被保険者とならない外国人の届出”の箇所にフォーマットがありますのでご記入いただき提出します。

【注】資格外活動許可とは

留学生がパートタイムで就労するには、資格外活動許可を取得していることが条件です。
この許可がない場合、どんなに短時間でも就労は認められないため、注意が必要です。

確認方法は、在留カードの裏面に資格外活動の許可のスタンプが押印さえているかで確認できます(右の画像の赤枠参照)。

(ウ)中長期在留者の受け入れに関する届出(雇用保険加入しない場合は必須)

雇用保険の被保険者資格の取得届を提出している上記(ア)の手続きを完了している場合は不要ですが、パートタイムで雇用保険に加入しない上記(イ)に該当する場合は、必ず届出を行う必要があります。

上記(イ)に該当する場合で、外国人労働者が中長期在留者として働く場合、入社後14日以内に「中長期在留者の受け入れに関する届出」を行う義務があります。この届出は会社側が責任を持って行い、入国管理局に提出します。

(エ)所属(契約)機関に関する届出(転職入社の場合は必須)

外国人本人が「所属(契約)機関に関する届出」を行う義務もあります。

これは退職や転職の際に必要な届出であり、外国人本人が自ら行うものです。退職や転職の際に忘れずに対応するよう、外国人本人に説明をしましょう。

書き方については、左記の写真の通り、「氏名」、「生年月日」、「住居地」、「在留カード番号」などの基本事項を記載し、「契約が終了した機関」とは「転職元の(退職した)会社」、「新たな契約を締結した機関」とは「転職先企業」のことを指しますので、転職先企業の情報をご記入ください。

また、こちらも届出を提出するのは、転職先の会社ではなく、転職した外国人の方ご本人ですが、転職先の会社側も、入社時に提出することを促すことをオススメしています。

(オ)その他、日本人と同じ手続きを行う

①雇用契約書兼労働条件通知書の交付

雇用契約書兼労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、雇用主が労働者に雇用条件を明示するために交付する書類です。内容には、契約期間、労働時間、給与、業務内容、勤務地、休暇などが含まれ、労働者にとって働く条件を確認するための重要な文書です。 詳しくは別記事で解説していますので、ご参考ください。

②雇用保険加入手続き

雇用契約書兼労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、雇用主が労働者に雇用条件を明示するために交付する書類です。内容には、契約期間、労働時間、給与、業務内容、勤務地、休暇などが含まれ、労働者にとって働く条件を確認するための重要な文書です。

③社会保険(健康保険・厚生年金等)の加入手続き

雇用契約書兼労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づき、雇用主が労働者に雇用条件を明示するために交付する書類です。内容には、契約期間、労働時間、給与、業務内容、勤務地、休暇などが含まれ、労働者にとって働く条件を確認するための重要な文書です。

入社時に就労資格証明書の取得検討

外国人労働者の更新に不安がある場合、入社時に就労資格証明書の取得も検討しておきましょう。労働資格証明書は、必須ではありませんが、外国人労働者の業務が在留資格の範囲内で適法であることを証明する書類で、転職先の会社での業務内容が要件に合致しているかを確認する手段として有効です。

初回更新申請時の注意点

外国人労働者が転職後に就労ビザを更新する際、会社はビザの要件が満たされているかを再確認することが重要です。例えば、転職後の職務内容が在留資格の条件を満たしていない場合、ビザの更新が認められない可能性があります。詳細については、以下の記事も参考にしてください。

よくある質問(Q&A)

「雇用保険の取得・喪失届」を提出していれば、「外国人雇用状況届出」が不要という根拠はどこに記載されていますか?
厚生労働省の外国人雇用状況届出に関するページには次のように記載されています。

「雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号)」または「雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号)」を提出することで、外国人雇用状況の届出を行ったこととなります。

注:外国人雇用状況届出について
このため、別途の外国人雇用状況の届出を行う必要はありません(雇入れの場合は翌月10日までに、離職の場合は翌日から10日以内)。 この説明から、外国人労働者が雇用保険の被保険者資格を取得した場合には、その取得届によって外国人雇用状況届出が完了し、追加の届出は不要とされていることがわかります​。
技術・人文知識・国際業務の在留資格で転職する場合、前職とは異なる職務内容であるものの、技術・人文知識・国際業務に該当する場合(例えば、前職は人文知識に従事、転職後は国際業務に従事する場合)は、変更申請は必要ですか?
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格で転職する場合、前職と異なる職務内容であっても、その職務が「技術・人文知識・国際業務」のいずれかに該当するならば、必ずしも在留資格変更申請は必要ありません。  技人国の在留資格は「技術」「人文知識」「国際業務」の3つのカテゴリーが含まれ、これらの業務のいずれかに該当していれば在留資格の範囲内とされます。 したがって、前職で「人文知識」に従事していて、転職後に「国際業務」に従事する場合でも、その範囲内であれば資格変更は不要です。 但し、ご本人の学歴・職歴が、「国際業務」の要件を満たしている必要があるので、就労資格証明書を取得することをおすすめいたします。

さいごに

この記事では、外国人労働者の転職入社・新規入社時に、会社が行うべき確認事項・必要な手続きについて、入社前・入社後に分けて詳しく解説いたしました。

外国人労働者の入社前後は、在留資格や届出手続きに関して特有の注意点が多く、適切な準備が不可欠です。日本人の雇用と同じ手続きに加えて、在留資格に関わる届出などが求められるため、企業としても法令遵守の観点から正確な手続きを行う必要があります。

今回の記事で解説したポイントを踏まえ、外国人労働者が適法に就労できる環境を整備していただけましたら幸いです。
万が一、不明点などがあれば、専門の行政書士等でご相談することをおすすめいたします。

クレアスト行政書士では就労ビザを専門としていますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。