※この記事は、製造業の現場作業員として外国人を正社員雇用したいという企業様向けに書いています。



「製造業の現場スタッフとして、外国人を正社員雇用できる就労ビザってないの?」
これまで中小企業経営者様からこのようなご相談を頂きましたが、「(技能実習生等を除き)原則就労できません。」とお答えせざるを得ませんでした。

しかし、2019年に入管法が改正されたことで、新在留資格「特定技能」又は、留学生の就職支援のための「特定活動」を活用すれば、製造業の現場スタッフ(正社員)として就労ビザを取得し、雇用することができるようになりました。

それでは一体どのような要件を満たせば、製造現場で正社員として雇用できる就労ビザを得ることが出来るかを見ていきましょう。

従来(2018年)までの製造現場で就労ビザを取得し外国人を雇用する方法

まずはじめに今回(2019年)の入管法改正により、どのような外国人が製造現場で正社員雇用することができるようになったかを明確にするため、従来(2018年)までの就労ビザの要件を簡単に説明します。

これまでは、外国人を正社員として、製造業の現場作業に従事する方法は、原則以下の方法しかできませんでした。


  1. 技能実習生(団体管理型又は、単独受入型)
  2. 製造業外国人従業員受入事業

「1.技能実習生」については、1993年に技能実習制度が設けられ、今日では約30万人(2018年時点)もの外国人が製造現場で働いている制度でご存知の方も多いと思います。
技能実習制度の特徴は、①母国に日本の技術を持ち帰り、母国の製造現場で役立てるため、②最長5年と期限が設けられてる、ことが挙げられます。

「2.製造業外国従業員受入事業」は、平成28年度より新たに設けられた制度で、資本関係のある海外グループ会社の製造現場スタッフに、日本の製造現場で技術を学ぶ機会を付与する就労ビザです。特徴としては、①制度自体が新しく、活用事例が少ないこと、②海外グループ会社と資本関係がある必要があること、③国内空洞化を促さないことなど、要件が非常に厳しいことが挙げられ、活用することは少々困難です。

上記2点が、2018年度まで外国人を製造現場で正社員雇用するための方法であり、「海外送り出し機関を通じて雇用しなければならないケースが多い(団体管理型)」「来日している外国人留学生を製造現場で正社員雇用することができない」などの制約がありました。

2019年製造業で現場作業員として就労ビザで雇用が可能に

そのような中、2019年に入管法が改正され、新在留資格「特定技能」及び、留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動」の2種類が新たに設けられたことで、一定の要件を満たせば、製造現場作業員として就労(正社員雇用)することができるようになりました。

それでは、どのような要件を満たせば、外国人の方を正社員として製造現場で雇用できるのか、一つずつ見ていきましょう。

(ア)2019年4月に改正:新在留資格「特定技能」のうちの”製造業(4区分あり)”を活用

はじめに、2019年4月に改正された新在留資格「特定技能」のうちの”製造業(4区分あり)”を活用して、製造業の現場作業員(正社員)として現場作業を行う就労ビザを取得する方法を説明します。4区分とは、「産業機械製造業」、「素形材産業」、「電気・電子情報関連産業」、「飲食料品製造業」の4つの分野で、該当しない製造業は活用することができないので、ご注意ください。

では、具体的な要件を見ていきましょう。


【新在留資格「特定技能(業種分類:製造業の4区分)」】
<パターン1>

  • 技能実習生として3年間従事した外国人の方

<パターン2>

  • 「業種別の技能試験」に合格すること、及び
  • 「日本語能力のテスト」又は、「日本語能力試験N4以上」に合格すること

上記のパターン1またはパターン2のいずれかであることが要件ですが、パターン2についてはまだ4つの製造分野では試験が開始されていません。(2019年6月時点)そのため、現段階ではパターン1の技能実習生2号を修了した(又はまもなく技能実習生2号を終える)外国人のみとなります。

その他、懸念点としては、①就労する前の「事前ガイダンス」及び「生活オリエンテーション」を実施することが義務づけられていること、②3ヶ月に1回の報告が必要であること、③通常の就労ビザよりも申請書類が多いことの3点が挙げられ、対応できる申請取次行政書士・登録支援機関(事前ガイダンスや生活オリエンテーションを実施してもらう専門家)が現時点では少なく、通常の就労ビザよりも少々費用が掛かることが挙げられます。(※弊所での対応は可能です。)

新在留資格「特定技能」の概要として纏めていますので、併せてご参考ください。

(イ)2019年5月に改正:留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動」を活用

次に、2019年5月に改正された留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動」を活用するパターンを説明します。こちらは、来日している(或いはしていた)外国人留学生が日本の大学を卒業後、製造業の現場作業員など、これまで正社員として就労不可であった職種で就労ビザを取得して正社員として、日本で雇用するために設けられました。

改正の背景は、2016年に外国人留学生の日本国内での就職率を現状の3割から5割に向上させることを目指すことが閣議決定され、就職の機会を拡大であるとされています。
※なお、大卒以上の外国人留学生で、卒業後そのまま日本で正社員として就職したいと考えている方は、6割以上いらっしゃいます。

では、具体的な審査要件を見ていきましょう。


【留学生の就職支援「特定活動」】

  1. 日本の大学を卒業、又は大学院を修了していること(新卒採用の場合は見込みでOK)
  2. 日本語能力試験N1、又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上

つまり、「日本の大学を卒業(見込み)」「日本語能力試験N1(BJTなら480点)」で製造業の現場作業員を正社員雇用できるということです。なお、大学(又は大学院)で「日本語」を専攻していれば、2.の試験合格要件は不要です。

但し、注意点として、工場の製造ラインで,日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ,本人も製造ラインに入って業務を行うものことはOKですが、製造 ラインで指示された作業にのみ従事だけではNGだということです。

つまり、日本語力を活かし、同じ会社で働く技能実習生や外国人従業員の通訳を兼ねてくださいということです。よって、自社に外国人従業員がいない企業様は許可が難しい可能性がありますのでお気をつけください。

こちらのビザ取得の流れは、通常の就労ビザ取得の流れと概ね同じで外国人の方の経歴だけでなく、「雇用する企業の事業内容と信頼性を証明できるか」も審査されますので、ご注意ください。

制度も新しく、申請書類も多く煩雑で、万が一、不許可になった場合、覆すのが大変ですので、申請をご検討の企業様は、就労ビザに強い申請取次行政書士や弁護士の方にご相談することをお勧めいたします。

製造業の現場スタッフとして正社員雇用をご検討されている企業様へ

製造業の現場作業員として外国人の正社員雇用をご検討されている企業様は、新在留資格「特定技能(業種分類:製造業)」に該当するのか、留学生の就職支援「特定活動」に該当するのかを確認しましょう。特定技能であれば4つ製造業区分に該当するか、留学生であれば日本語能力検定に合格しているかを確認します。

前者の「特定技能(業種分類:製造業)」を活用したいけど、技能実習生の経験がない場合は近々開始される試験に合格するため、受験勉強の準備をし、就労ビザで雇用できるよう取り組んでいけば良いと思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。

2019年新たに新設された製造業の現場作業員の外国人労働者を正社員として雇うための就労ビザをうまく活用できるかどうかは、企業様に取っても外国人の方に取っても、今後に大きく影響してきます。

制度が新しいため、入国管理局の審査においても事例が少なく、慎重な申請が必要になってきますので、信頼できる専門家にご相談することをお勧めいたします。

大阪、京都、神戸近郊で、製造業の現場作業員を正社員で雇用するための就労ビザ申請に関する相談は、クレアスト行政書士事務所までお尋ねください。