留学生の就職支援「特定活動46号ビザ」の記事のメイン画像

特定活動46号ビザは、日本の大学や専門学校を卒業した外国人留学生が、接客業や現場作業といったこれまで就労ビザでは認められていなかった職種で働けるようにする制度です。この制度は、2019年の入管法改正により新設されました。

背景には、日本国内の深刻な人手不足や外国人留学生の低い就職率がありました。大卒以上の留学生の日本での就職率が約30%にとどまる一方、就職を希望する割合は約65%と高く、現状とのギャップが課題とされていました。これを改善し、留学生の就職率を50%に引き上げることを目指して、留学生支援策の一環として導入されたのが特定活動46号ビザです。

この制度により、留学生が学業で得た知識を活かしつつ、飲食業や小売業などの分野で活躍できる機会が広がっています。この記事では、留学生の就職支援のための「特定活動46号ビザ」の活用方法、製造現場や飲食・宿泊業の接客業務など、就労可能な仕事と職種、必要書類、技術・人文知識・国際業務ビザや特定技能ビザとの違い等について、詳しく解説いたします。

特定活動46号ビザのメリット

メリット①:接客業や現場作業での就労が可能

最大のメリットは、特定活動46号ビザは、これまで技術・人文知識・国際業務ビザや技能ビザなどでは対象外とされていた接客業や現場産業の職種で働くことができる点です。従来の「技術・人文知識・国際業務ビザ」では、主に専門職(設計エンジニア等)や事務職(貿易事務・海外取引業務等)が対象であり、留学生が卒業後に日本の労働市場で幅広く活躍するには制約がありました。しかし、特定活動46号ビザの導入により、飲食業や小売業、宿泊業といった人手不足が深刻な分野での就労が認められるようになりました。

メリット②:留学生が日本での就職の道を広げられる

2つ目のメリットは、外国人留学生が卒業後、日本で就職する道が広げられた点です。日本で学んだ知識や経験を活かして働きたいと考える留学生は多いものの、従来の制度では就職の機会が限定的でした。特定活動46号ビザの創設により、留学生がスムーズに日本の労働市場に参入できるようになりました。また、この制度は留学生の能力を最大限活用することで、留学生個人だけでなく、受け入れる企業や社会全体にとっても利益をもたらします。

メリット③:日本語能力を活かした仕事の実務経験が積める

3つ目のメリットは、留学生が日本語能力をさらに伸ばす機会を得られる点が大きなメリットです。特に接客業や飲食業では、顧客対応や同僚とのコミュニケーションを通じて、日本語力だけでなく、日本文化やビジネスマナーについても深く理解することができます。これにより、留学生がより日本社会に適応し、長期的なキャリア形成を進めることが可能になります。

特定活動46号ビザの対象となる外国人

特定活動46号ビザは、日本国内の教育機関で学び、日本での就労を希望する外国人留学生を対象とした制度です。対象となるためには、①学歴要件と②日本語能力要件(条件)を両方を満たす必要があります。

条件①:日本の大学・大学院を修了、または短期大学や認定専修学校専門課程を修了した者

日本国内の大学や大学院、短期大学、高等専門学校、または認定された専修学校専門課程を修了し、「学士の学位」または「高度専門士」の称号を取得していることが条件です。一方で、外国の大学を卒業した者や認定を受けていない専修学校専門課程を修了した場合は、このビザの対象外となります。
2024年2月末に制度の変更があり、短期大学や高等専門学校の卒業者や専門職大学の前期課程修了者も対象となりました。(従来は大卒以上に限定)

条件②:日本語能力試験N1、又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上

日本語能力試験(JLPT)のN1、またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を取得していることが条件です。さらに、日本国内または外国の大学・大学院で「日本語」を専攻し、日本語学や日本語教育学などの専門知識を習得して卒業した場合も、この基準を満たすとみなされます。ただし、この場合でも条件①の学歴要件を満たす必要があります。

特定活動46号ビザで働くことのできる仕事・職種一覧

特定活動46号ビザでは、これまで外国人留学生がアルバイトや資格外活動としてしか従事できなかった業種での正社員雇用が可能になりました。このビザを活用することで、飲食業や宿泊業、小売業、製造業といった幅広い職種で活躍するチャンスが広がります。

ただし、単純な作業に従事するだけでは許可されず、接客や通訳、指導など、日本語能力や母国語のスキルを活かした業務が求められます。以下の表に、具体的な職種とその内容、注意点をわかりやすくまとめましたので参考にしてください。

職種仕事内容の例注意点
飲食店の接客スタッフレストラン、居酒屋などでのホール接客業務
外国人客への通訳対応
日本人客には日本語で接客、外国人客には通訳を兼ねた対応を行うこと
厨房での皿洗いや清掃のみはNG
製造ラインスタッフ製造現場での作業指示の通訳・指導
自ら製造ラインで業務を遂行
日本語を活かし技能実習生や外国人従業員への通訳・指導を行うこと
指示された作業のみに従事することはNG
宿泊業の接客スタッフホテルや旅館での接客業務
ホームページの翻訳
外国人宿泊客への通訳
客室の清掃のみを業務とすることはNG
接客業務以外に翻訳や外国人宿泊客対応も行うこと
小売店の接客スタッフ百貨店、コンビニ、量販店での接客販売業務
商品陳列や店舗の清掃
外国人客への通訳対応
商品の陳列や清掃だけではNG
外国人客対応時には通訳業務を兼ねること
タクシードライバー外国人観光客への観光案内
通訳を兼ねた接客
第二種運転免許の取得が必要
車両の整備や清掃のみを業務とすることはNG
介護スタッフ外国人利用者や技能実習生への通訳・指導
日本語を活かした介護業務
清掃や衣類の洗濯のみの業務はNG
外国人従業員や利用者への通訳・指導を行うこと
食品製造業務商品企画・開発
商品製造ラインでの業務
他従業員との日本語でのコミュニケーション
製造ライン作業のみではNG
商品の企画・開発など付加価値のある業務を含む必要がある
出入国在留管理庁留学生の就職支援に係る「特定活動」のガイドライン

特定活動46号ビザの注意点・気を付けること

注意点①:単純作業だけでの従事はNG

特定活動46号ビザでは、単純作業だけを行うことは認められていません。接客や指導、通訳といった付加価値のある役割を担うことが前提です。例えば、飲食店で皿洗いや清掃だけを行う、工場で単純な製造ライン作業に従事する、といった業務はNGとされています。具体的には、飲食店では日本人客への接客や外国人客への通訳対応が求められ、工場では技能実習生や外国人従業員への指導を兼ねることが条件となります。

注意点②:日本語能力要件のハードルが高い

特定活動46号ビザでは、高い日本語能力が求められる点にも注意が必要です。具体的には、日本語能力試験(JLPT)のN1合格、またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上が必須要件となります。この基準は、日本国内での職務において円滑な意思疎通を図るために設けられています。さらに、単に日本語を理解するだけでなく、職場での指導や顧客対応など、実践的な日本語能力が求められる場面も多いです。

注意点③:不法就労を防ぐため業務内容を明確にする

不法就労とならないよう、業務内容を明確にする必要があります。このビザで認められる業務には制限があり、許可された範囲を超える業務に従事すると不法就労とみなされるリスクがあります。たとえば、工場での製造ライン業務を行う場合、日本人従業員への指導や通訳業務を兼ねていることを証明する必要があります。また、飲食店での勤務でも、接客や通訳業務が含まれているかが重要です。雇用主と雇用契約時に職務内容を明確化し、ビザ要件に適合する業務を遂行することが不可欠です。

技術・人文知識・国際業務ビザとの違い

技術・人文知識・国際業務ビザは、高度な専門職で活躍するためのビザであり、専門的なスキルが重視されます。一方、特定活動46号ビザは、接客業や現場作業といった業務にも従事でき、日本語能力や学歴を基に日本の労働市場で活躍の場を広げることが目的です。特定活動46号ビザは、特に日本国内の中小企業の人手不足解消と外国人留学生の就職支援に特化している点が特徴です。以下の比較表で詳しく解説します。

項目技術・人文知識・国際業務ビザ特定活動46号ビザ
対象職種専門職、事務職(例:技術開発、翻訳、経理、マーケティングなど)接客業、現場作業(例:飲食業、宿泊業、小売業など)
主な目的専門知識や技術を活用した高度な職務への従事日本の人手不足を補い、外国人留学生の就職機会を拡大
学歴要件大学卒業(学士)または実務経験10年以上日本の大学・大学院卒業、または高度専門士取得
日本語能力必須ではない(職種により求められることもある)日本語能力試験N1またはBJT480点以上
対象者の専門性専門分野の知識やスキルが重視される日本語能力と学歴を基に、幅広い職種での活躍を可能にする

技術・人文知識・国際業務ビザの詳細は、別記事にまとめていますので、ご参考ください。

特定技能ビザとの違い

特定活動46号ビザと特定技能ビザは、どちらも日本での就労を希望する外国人向けの在留資格ですが、目的や対象者、仕事内容には明確な違いがあります。特定活動46号ビザは主に日本の大学や専門学校を卒業した留学生を対象にしており、人手不足が深刻な業界での就労を目的としています。一方、特定技能ビザは特定の産業分野での労働力確保を目的とし、技能実習を修了した者や技能試験に合格した者が対象です。以下の表で、両者の特徴を比較して解説します。

項目特定活動46号ビザ特定技能ビザ
目的留学生の日本での就職支援、人手不足業界での就労を促進特定の産業分野での労働力確保
対象者– 日本の大学や専門学校を卒業した留学生
– 認定専修学校専門課程修了者
– 技能試験・日本語能力試験に合格した外国人
– 技能実習2号または3号を修了した者
対象職種飲食業、小売業、宿泊業、製造業など幅広い業界介護、建設、農業、製造業など14の特定産業分野
必要な要件– 日本語能力試験N1またはBJT480点以上
– 学歴(学士、高度専門士など)
– 技能試験合格
– 日本語能力試験N4以上(職種により異なる)
職務内容の柔軟性接客業務や通訳業務など、現場での幅広い役割を認める業種ごとに決められた特定の業務に従事
在留期間1年(更新可能)最大5年(分野により異なる)
転職の可能性転職には在留資格変更申請が必要原則として、特定分野内でのみ転職可能

特定技能ビザについては、別の記事で解説していますので、ご参考ください。

特定活動46号ビザの必要書類

特定活動46号ビザを申請する際には、必要書類を正確に揃えることが許可取得の重要なポイントです。以下、必要書類一覧です。但し、個別事情により必要書類が異なることがありますのでご参考程度にご確認ください。

特定活動46号ビザの必要書類一覧
  • 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
  • 写真(縦4cm×横3cm、申請前3か月以内に撮影されたもの)
  • パスポート及び在留カード(在留資格変更許可申請時は提示のみ)
  • 返信用封筒(在留資格認定証明書交付申請時のみ必要)
  • 労働条件を明示する文書(雇用契約書の写し等)
  • 雇用理由書(該当する業務が明確な場合は不要)
  • 学歴を証明する文書(卒業証明書、学位授与証明書など)
  • 日本語能力試験N1またはBJT480点以上の成績証明書
  • 勤務先の事業内容を明らかにする資料(会社案内、登記事項証明書等)
  • 課税証明書及び納税証明書(転職等による変更申請の場合のみ必要)

よくある質問(FAQ)

特定活動46号は更新上限はありますか?
ありません。特定技能1号(5年)と異なり、更新条件を満たす限り、何度でも更新可能です。
転職できますか?
はい。できます。但し、変更申請を行う必要があります。一般的な技術・人文知識・国際業務ビザでは同一業務であれば変更申請は不要ですが、特定活動46号では変更申請が必要なのでご注意ください。
家族を呼び寄せることはできますか?
はい。できます。家族滞在ビザではなく、特定活動47号ビザを取得することになります。

特定活動46号ビザの申請代行(取次)はお任せください(大阪から全国対応可)

いかがでしたでしょうか。この記事では、「特定活動46号ビザ」の活用方法、製造現場や飲食・宿泊業の接客業務など、就労可能な仕事と職種、必要書類、技術・人文知識・国際業務ビザや特定技能ビザとの違いを解説してきました。

特定活動46号ビザは、日本の大学や専門学校を卒業した外国人留学生が、接客業や現場作業といった職種で働けるようにする新しい制度です。このビザにより、飲食業や宿泊業、小売業、製造業など幅広い分野で、学業や日本語能力を活かして就労の道が開かれています。一方で、単純作業は認められず、通訳や指導などの付加価値のある業務が求められる点には注意が必要です。

また、技術・人文知識・国際業務ビザや特定技能ビザとの違いを理解し、自身の状況に適したビザを選ぶことが重要です。どのビザで申請すべきか迷った場合は、専門知識を持つプロに相談することをおすすめします。

当事務所は大阪を拠点に、オンライン申請やWEB会議を活用しながら、全国対応でサポートを提供しております。どの地域にお住まいの方でも、安心してご相談いただけます。申請や相談をご検討中の方は、大阪拠点のクレアスト行政書士・中小企業診断士事務所にぜひご相談ください。