高度専門職ビザは、平成26年に改正された入管法において、日本が高度な専門知識や技術を持つ外国人材を受け入れるために設けられた在留資格です。
新たに設けられたとはいえ、職種が増えたわけではなく、既存の在留資格(技術・人文知識・国際業務等の就労ビザ)の審査基準に該当している方で、レベルの高い能力を持っている外国人に与えられる在留資格です。
高度専門職ビザは、通常の就労ビザとは異なり、高度人材ポイント制によって取得が決まる点が特徴で、高度な専門的能力を持っている外国人を優遇(永住権の短縮や家族の呼び寄せの基準緩和など)して、受け入れを促進するために設けられた点が挙げられます。
活動内容に応じて「1号(イ・ロ・ハ)」の3つに分類され、さらに一定条件を満たすことで「2号」に移行することも可能です。
この記事では、高度専門職ビザの取得条件・ポイント計算表・1号2号の違い、必要書類、よくある質問等について、詳しく解説しています。
高度専門職の認定件数推移(累計)
時点 | 学術研究 | 専門・技術 | 経営・管理 | 合計 |
---|---|---|---|---|
2012年12月 | 48 | 248 | 17 | 313 |
2016年12月 | 1,276 | 5,168 | 225 | 6,669 |
2020年12月 | 3,801 | 21,557 | 1,048 | 26,406 |
2024年6月 | 6,394 | 41,163 | 3,732 | 51,289 |
高度専門職ビザの認定件数は、2012年の制度導入時にはわずか313件でしたが、2024年6月時点で51,289件に達するなど急増しています。
特に「高度専門職1号(イ)」にかかる活動が大半を占め、ITや研究分野での需要の高さが顕著です。この背景には、外国人高度人材の受け入れを促進する日本政府の政策があり、永住権の優遇や家族の帯同特典がさらなる増加を後押ししています。
高度専門職1号(イ・ロ・ハ)の区分と職種一覧(例)
高度専門職1号(イ・ロ・ハ)は、活動内容ごとに「学術研究活動」「専門・技術活動」「経営・管理活動」に区分されます。それぞれの区分に応じた在留資格と職種が該当し、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得する等の条件を満たすと高度専門職を取得できます。
区分 | 活動内容 | 該当する在留資格 | 具体的な職種一覧(例) |
---|---|---|---|
高度専門職1号イ | 高度学術研究活動 | 教授、研究、教育 | 大学教授、准教授、研究機関の研究員、学校教師(特定の条件下) |
高度専門職1号ロ | 高度専門・技術活動 | 技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、教授、研究、教育、芸術、報道、経営管理、法律会計業務、医療、興行、宗教、技能 | ITエンジニア、通訳者、コンサルタント、海外からの転勤社員、ジャーナリスト、特派員、医師、看護師、プロの音楽家、俳優、宗教指導者、僧侶、料理人、工芸職人 |
高度専門職1号ハ | 高度経営・管理活動 | 経営管理、法律会計業務、興行 | 企業の経営者、役員、弁護士、公認会計士、イベントプロデューサー |
高度専門職1号イ:取得条件
イ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営し若しくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究,研究の指導若しくは教育をする活動
注:出入国在留管理庁:「在留資格一覧表 入管法別表第一の上欄の在留資格(活動資格)」より
高度専門職1号イは、主に教授ビザや研究ビザ等に該当する活動を行う外国人の中で、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得した方が対象条件となる在留資格です。
日本の大学で教授、准教授、講師として教育や研究活動を行う方や、国や企業が運営する研究機関での研究活動に従事する方が主な対象となります。ポイント加算の主な要素は、博士号の取得、学術論文の発表実績、研究分野での受賞歴などであり、学術的成果が評価の中心となります。
高度専門職1号ロ:取得条件
ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
注:出入国在留管理庁:「在留資格一覧表 入管法別表第一の上欄の在留資格(活動資格)」より
高度専門職1号ロは、技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)等に該当する活動を行う外国人の中で、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得した方が対象条件となる在留資格です。
ITエンジニアや通訳、コンサルタント、弁護士など、専門性の高い職種が主な対象であり、学歴、職歴、年収、専門分野での実績がポイント加算の鍵となります。
高度専門職1号の中でも特に申請者が多く、認定件数はイ・ロ・ハの中で最も多いのが特徴です。
このビザを取得することで、永住申請の優遇措置や配偶者の就労、親の帯同といった特典が付与されるため、通常の技人国ビザよりも多くのメリットがあります。専門職や技術職で日本に滞在する外国人にとって、キャリアの幅を広げるための重要な選択肢です。
外国人を雇用することが決まった会社様に、就労ビザの種類、申請する際の会社側の注意点、審査基準、期間等を、就労ビザの申請代行(取次)を専門とする行政書士が詳しく解説しています。
高度専門職1号ハ:取得条件
ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
注:出入国在留管理庁:「在留資格一覧表 入管法別表第一の上欄の在留資格(活動資格)」より
高度専門職1号ハは、経営管理ビザ等に該当する活動を行う外国人の中で、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得した方が対象条件となる在留資格です。企業の経営者や役員、事業責任者として日本で活動する方が主な対象です。ポイント加算では、事業規模や経営実績、学歴や年収が重要な要素となります。
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高度専門職2号の取得条件
高度専門職2号は、高度専門職1号での活動を一定期間継続した後に取得可能な在留資格です。この資格は、1号に比べて在留期間の制限がなく、活動内容も大幅に緩和されるため、より柔軟な働き方が可能です。主な取得条件は以下の通りです:
項目 | 条件 |
---|---|
在留期間 | 高度専門職1号で3年以上在留(80点以上のポイントを獲得している場合は1年以上) |
活動内容 | 1号で認められる活動に加え、ほぼ全ての就労活動が可能 |
在留期間 | 無期限 |
1号と2号の違い
以下は高度専門職1号と2号の主な違いは以下の通り。
項目 | 高度専門職1号 | 高度専門職2号 |
---|---|---|
在留期間 | 5年 | 無期限 |
活動内容 | イ・ロ・ハの各活動に限定 | ほぼ全ての就労活動が可能 |
取得条件 | ポイント制で70点以上 | 1号の在留期間とポイント条件を満たす |
1号は特定の活動内容に限定されますが、2号では活動範囲が大幅に広がります。また、在留期間が無期限となるため、更新の手間がなく、より安定した環境で日本での活動を継続できます。
高度専門職ビザのポイント計算表
高度専門職ビザの取得には、高度人材ポイント計算表で70点以上を獲得する必要があります。このポイント計算表は、申請者の学歴や職歴、年収、研究実績などの要素を点数化する仕組みで、基礎点と加算点で構成されています。
下記のポイント計算表は、実際の高度専門職1号ロ(技術・人文知識・国際業務等に該当する活動)のポイント計算表です。この計算表を使い、ご自身のポイントが70点以上であるかを計算してみるとよいでしょう。※下記のポイント計算表をクリックするとダウンロードできます。
高度専門職1号イ(教授等)のポイント計算表はこちら
高度専門職1号ハ(経営管理等)のポイント計算表はこちら
高度専門職ビザのポイント計算表のExcelがダウンロードできます。ポイント計算表参考様式Excelよりダウンロードしご自身のポイントの計算にご活用ください。
高度専門職のメリット7選
メリット①:永住権の取得が早い
通常、永住権の申請には10年以上の滞在が必要ですが、高度専門職ビザ取得者は最短1年(ポイントが80点以上の場合)または3年(70点以上の場合)で申請可能です。この特典により、早期の永住権取得が実現します。
メリット②: 5年の在留期間が一律で付与
高度専門職ビザ保持者には、法律上最長となる5年の在留期間が一律で付与されます。この期間は更新が可能で、安定した滞在環境が整います。
メリット③:配偶者が働ける特例措置
高度専門職ビザ保持者の配偶者は、学歴や職歴の条件を満たさなくても、日本で就労することが可能です。配偶者が技術・人文知識・国際業務ビザ等の条件を満たさなくても、柔軟に取得できることが大きなメリットです。
メリット④:親の帯同が認められる条件
高度専門職ビザでは、年収800万円以上で7歳未満の子供を養育している場合、親を帯同させることが可能です。申請時には、親子関係や養育の必要性を証明する書類が必要ですが、家族全体での生活支援を容易にするメリットです。
メリット⑤:家事使用人を雇用可能
一定条件を満たせば、外国人の家事使用人を雇用することが認められます。例えば、年収が高い場合や、特定の家族構成の場合に適用されます。この制度は、家庭内の負担を軽減し、仕事に専念できる環境を整えるために役立ちます。
メリット⑥: 入国・在留手続きが簡略化される
高度専門職ビザは、通常の在留資格よりも迅速な審査が行われます。入国や在留手続きにかかる時間が短縮されるため、ビザ申請や更新時の負担が軽減され、スムーズに活動を開始できます。
メリット⑦:副業が認められる(複合的な在留活動)
高度専門職ビザを取得している場合、主たる活動に支障がない範囲で副業や関連事業を行うことが許可される場合があります。たとえば、大学での研究活動と関連事業の経営を同時に行うといった、異なる在留資格にまたがる活動が認められ、資格外活動許可も不要であることが特徴です。
高度専門職の必要書類
高度専門職ビザを申請する際には、必要書類を正確に揃えることが許可取得の重要なポイントです。
基本的には、上記【高度専門職1号(イ・ロ・ハ)の区分と職種一覧(例)】で解説した表の【該当する在留資格】で必要な書類に加えて、ポイント計算表及びそのポイントを獲得している証拠書類が必要になります。
- (新規認定取得時)在留資格認定証明書交付申請書
- (変更申請時)在留資格変更許可申請書
- 顔写真(縦4cm×横3cm)
- 該当する在留資格(技術・人文知識・国際業務、経営管理等)の申請に必要な書類
- ポイント計算表(70点以上であること)
- ポイント計算表の疎明資料(ポイントを獲得していることを証明できる書類。例:日本語能力N1の合格証明書、年収証明書(給与明細、雇用契約書、源泉徴収票等))
- その他、個別事情に応じて、提出が求められることがあります。
必要書類のフォーマットは出入国在留管理庁の公式サイトよりダウンロードください。
よくある質問(Q&A)
- 高度専門職ビザで転職は可能ですか?
- はい、高度専門職ビザ保持者でも転職は可能です。ただし、転職に伴い、在留資格の変更申請または更新申請が必要です。転職先でも年収や職務内容がポイント計算の基準を満たす必要があり、ポイントが70点以上であることが条件になります。
- 永住申請の条件と高度専門職ビザの優遇措置はなんですか?
- 通常は永住権取得に10年以上の在留歴が必要ですが、ポイントが80点以上の場合、1年の在留で永住申請可能。ポイントが70点以上の場合、3年の在留で永住申請可能。
- 親を帯同させることはできますか?
- はい、一定の条件を満たせば、高度専門職ビザ保持者は親を帯同させることが可能です。ただし、親を帯同させるには、以下の要件を満たす必要があります。①世帯年収が800万円以上であること(配偶者の収入を含めて計算可能)。②7歳未満の子供を養育している、または妊娠中の配偶者を支援する目的であること。③帯同する親が高度専門職ビザ保持者または配偶者の親であること。
- 副業は認められていますか?
- はい。高度専門職ビザは、複数の在留資格にまたがる活動を許容する特例があるため、研究や技術活動に関連する副業を行うことが認められています。主たる活動と関連性がある副業であれば資格外活動許可は不要です。例えば、”大学教授が、自身の研究内容を応用したコンサルティング業務を行う。”や”ITエンジニアが、技術セミナーの講師として活動す”といった例が挙げられます。
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この記事では、高度専門職ビザの取得条件、ポイント計算表、1号と2号の違い、必要書類、よくある質問について詳しく解説してきました。
高度専門職ビザの取得は、雇用する日本企業にとっても外国人の方にとっても、その後のキャリアや事業展開に大きな影響を与える重要なポイントです。また、申請手続きをサポートする専門家のスキルや経験も、成功の鍵を握ります。信頼できる行政書士や専門家に相談することで、スムーズな手続きが期待できます。
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