2019年4月 改正入管法による新在留資格「特定技能」、2019年5月 留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動(告示第46号)」により、これまで飲食店で接客スタッフ(正社員)として雇用することが出来なかった外国人を雇用することができるようになりました。

これまで、飲食店経営者様から「外国人留学生のアルバイトの方を大学業後、そのまま就労ビザを取得して接客スタッフ(正社員)として雇用したい。」という相談が頂きましたが、「原則就労できません。」とお答えせざるを得ませんでした。
※外国人留学生は在留資格「留学」であり、資格外活動許可を得れば飲食店で接客のアルバイトをすることは可能ですが、就労ビザを取得し正社員で働くことはできませんでした。

しかし、今回の入管法の改正により、飲食店の接客スタッフ(正社員)であっても一定の要件を満たせば就労ビザを取得し雇用することができるという大幅な変更がありました。

成田 将之

従来までの制度との違いを踏まえながら、飲食店の接客スタッフ(正社員)として、外国人が就労ビザできる方法を解説いたします。

従来(2018年以前)の飲食店で就労ビザで雇用する際の審査要件

2019年の入管法改正でどのような外国人が就労することができるようになったかを明確にするため、はじめに従来(2018年)までの就労ビザの要件を簡単に説明します。

従来は、外国料理店ではない通常の飲食店の接客スタッフ(正社員)は、該当する在留資格がなく就労ビザを取得し雇用することは原則不可でした。
そのため、飲食店で外国人が就労ビザを取得し正社員で働くためには、外国料理店(母国料理)の調理師(在留資格:技能)や、顧客の大半が外国人観光客の飲食店での、外国語のメニューの翻訳業務、食材等の海外取引業務、来店された外国人の通訳業務(在留資格:技術・人文知識・国際業務)などに限られていました。

そしてその具体的な要件が、「外国料理店(母国料理)の調理師(在留資格:技能ビザ)」は、10年以上母国で調理師としての実務経験(中国籍の方であれば母国の中華料理店)があることを前職の会社から証明書を発行してもらう必要あり、「顧客の大半が外国人観光客の飲食店での、外国語のメニューの翻訳業務、食材等の海外取引業務、来店された外国人の通訳業務(在留資格:技術・人文知識・国際業務ビザ)」は、大卒要件の他、その飲食店が本当に顧客の大半が外国人観光客で語学を使った業務を勤務時間の大半の割合を占めるということの証明が必要で、外国人留学生が大学卒業後、就労ビザを取得し、正社員として、飲食店で接客業務を行うことはできませんでした。

法改正後:飲食店で接客業務を行うための2つの就労ビザ(正社員)とは?

しかし、2019年、新在留資格「特定技能」及び、留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動(告示第46号)」の2種類が新たに設けられたことで、一定の要件を満たせば、外国人が就労ビザを取得し、正社員として、飲食店で接客業務を行うことができるようになりました。

では、一体、新設された就労ビザを取得し雇用するためにはどのような要件が求められるのか、それぞれひとつずつ見ていきましょう。

(1つ目の方法)新在留資格「特定技能」のうちの”外食業”を取得する方法

はじめに、2019年4月に改正された新在留資格「特定技能」のうちの”外食業”を活用して、飲食店で正社員として接客業務を行う就労ビザを取得する方法を説明します。

早速、具体的な要件を見ていきましょう。


【新在留資格「特定技能(業種分類:外食業)」】

  1. 「業種別の技能試験」に合格すること
  2. 「日本語能力のテスト」又は、「日本語能力試験N4以上」に合格すること

新在留資格「特定技能」を活用して飲食店で接客スタッフを正社員で雇用するためには、上記2点の試験に合格することが要件となっており、学歴要件や実務経験要件はありません。

なお、法改正された2019年以降、特定技能「外食業」で外国人を受け入れた人数は、約53,000人です(2023年時点)。

なお、「業種別の技能試験」の合格率は特定技能1号「外食業」で60~70%程度、特定技能2号では「外食業」30~40%程度となっています。まずは、1号(最長5年)を取得することが必要で、合格率も低くなく一定の期間勉強すれば、合格できるかと思います。

但し、かなり申し込みが殺到しており、定員オーバーで受験できないケースもあるようなので、試験の開催機関である「一般社団法人外国人食品産業技能評価機構」のサイトをチェックし、試験開催日時や場所を確認し、お早めにお申し込みされることをお勧めいたします。

その他、懸念点としては、①就労する前の「事前ガイダンス」及び「生活オリエンテーション」を実施することが義務づけられていること、②3ヶ月に1回の報告が必要であること、③通常の就労ビザよりも申請書類が多いことの3点が挙げられ、対応できる申請取次行政書士・登録支援機関(事前ガイダンスや生活オリエンテーションを実施してもらう専門家)が現時点では少なく、通常の就労ビザよりも少々費用が掛かることが挙げられます。(※弊所での対応は可能です。)

新在留資格「特定技能」の概要として纏めていますので、併せてご参考ください。

(2つ目の方法)留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動(告示第46号)」を取得する方法

次に、2019年5月に改正された留学生の就職支援のための法務省告示の改正「特定活動(告示第46号)」を活用するパターンを説明します。こちらは、来日している(或いはしていた)外国人留学生が日本の大学を卒業後、飲食店の接客スタッフなど、これまで就労不可であった職種で就労ビザを取得して正社員として、日本で雇用するために設けられました。

改正の背景は、2016年に外国人留学生の日本国内での就職率を現状の3割から5割に向上させることを目指すことが閣議決定され、就職の機会を拡大であるとされています。
※なお、大卒以上の外国人留学生で、卒業後そのまま日本で正社員として就職したいと考えている方は、6割以上いらっしゃいます。2021年時点の外国人留学生の就職率は46.5%。※参照:文部科学省「外国人留学生の就職促進について(令和5年6月

それでは、具体的な審査要件を見ていきましょう。


【留学生の就職支援「特定活動(告示第46号)」】

  1. 日本の大学を卒業、又は大学院を修了していること(新卒採用の場合は見込みでOK)
  2. 日本語能力試験N1、又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上

つまり、「日本の大学を卒業(見込み)」「日本語能力試験N1(BJTなら480点)」で飲食店の接客スタッフ(正社員)を行うことができるということです。
なお、大学(又は大学院)で「日本語」を専攻していれば、2.の試験合格要件は不要です。

但し、注意点として「飲食店内で、外国人客(が来店した際は)通訳を兼ねて接客業務を行うこと。そして、日本人客に(日本語で)接客業務を行うこと。」とされています。つまり、日本人客に(日本語で)接客業務を行うだけでなく、外国人客が来店した際はその語学を活かして通訳業務もしてくださいね、ということが言えます。また、厨房での皿洗いや掃除だけを業務とするのはNGですよ!ということが明記されており、あくまでも飲食店内の接客業務(外国人客には通訳業務)がメインですよ!ということですのでお気をつけください。

こちらのビザ取得の流れは、通常の就労ビザ取得の流れと概ね同じで外国人の方の経歴だけでなく、「雇用する企業の事業内容と信頼性を証明できるか」も審査されますので、ご注意ください。

制度も新しく、申請書類も多く煩雑で、万が一不許可になった場合、覆すのが大変ですので、申請をご検討の企業様は、就労ビザに強い申請取次行政書士や弁護士の方にご相談することをお勧めいたします。

どちらの就労ビザを取得するのがよいのか?外国人雇用を検討中の飲食店の会社様へ

外国人の方を飲食店の接客スタッフとして正社員雇用をご検討されている企業様は、はじめに先で述べた新在留資格「特定技能(業種分類:外食業)」に該当するのか、留学生の就職支援「特定活動(告示第46号)」に該当するのかを確認しましょう。

弊所の見解では、外国人留学生で日本の大学を卒業した(見込み)の方を採用する場合は、後者の留学生の就職支援「特定活動」が適していると判断しています。なぜなら、外国人留学生の日本国内での就職率を現状の3割から5割に向上させることを目指すという国の施策を一致していること・手続きの複雑性から見ても「特定技能」よりも少ないことからです(2021年時点の外国人留学生の就職率は46.5%と目標未達)。但し、該当しない場合は、前者の「特定技能(業種分類:外食業)」を取得するため、受験勉強の準備をし、就労ビザで雇用できるよう取り組んでいけば良いと思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。

2019年の法改正により、飲食店の接客スタッフを正社員として雇用できる方法が拡充されました。これらの2つの就労ビザをうまく活用できるかどうかは、企業に取っても外国人の方に取っても、今後に大きく影響してきます。

そして、相談する専門家の技量も大きく関わってきます。制度が新しいため、入国管理局の審査においても事例が少なく、慎重な申請が必要になってきますので、信頼できる専門家にご相談することをお勧めいたします。

弊社は、大阪入国管理局管轄(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・和歌山県)区域に事務所を有していますが、在留申請オンラインシステムで全国のビザ申請代行(取次)に対応しています。お困りごとがあればお気軽にクレアスト行政書士事務所までお尋ねください。

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