外国人労働者が退職する際には、日本人の退職手続きに加え、在留資格や社会保険の処理など、外国人特有の手続きが必要です。

会社側は、外国人特有の手続きを適切に行うことで、法令遵守すると共に、外国人が安心して転職又は帰国できるように配慮することが望ましいです。

この記事では、外国人労働者の退職手続き・帰国時の注意事項について詳しく解説いたします。 

1. 在留資格に関する届出

外国人の退職には、在留資格に関する手続きが含まれており、外国人労働者特有の手続きが必要です。
特に、雇用保険や在留カード番号等に関する届け出は、日本人とは異なるため、順に説明いたします。

(ア) 雇用保険被保険者資格喪失届と必要書類の作成・提出

「雇用保険被保険者資格喪失届」は、従業員が退職した場合や雇用保険の対象外となった際に、雇用主がハローワークに提出する届出です。

外国人が雇用保険に加入している場合、(日本人と同様に)退職時に提出する必要があります。
この手続きは、被保険者資格が終了したことを記録するためのもので、退職日から起算して10日以内に提出する必要があります。

在留カードを保有する外国人の場合は、右の画像の赤枠の箇所に、「被保険者氏名」「在留期間」「就労区分」「国籍及び国籍コード」「在留資格及び在留資格コード」を記載する欄があります。

盛れなく記載し手続きを行うことで、外国人の雇用状況が適切に記録され、企業としての法令遵守が保たれます。

(イ)在留カード番号記載様式の提出

2020年3月から、雇用保険の資格喪失届とともに「在留カード番号記載様式」を提出することが義務化されました。これは、外国人雇用状況の把握と適切な在留管理を目的としています。

この様式には、在留カード番号を記載し、外国人社員の在留資格情報を正確に報告するため、各企業は提出を怠らないようにしましょう。

(ウ)外国人雇用状況の届出

雇用保険に加入していない外国人(パートやアルバイトの場合)は、退職時に「外国人雇用状況の届出」が必要です。

これは、外国人が企業に属さなくなったことを入国管理局に報告するための手続きで、外国人の雇用が終了したことを正確に記録するために重要です。

(エ)中長期在留者受入れ終了の届出

中長期在留者を受け入れていた場合、その外国人が退職すると「中長期在留者受入れ終了の届出」を行う必要があります。

この手続きは、雇用保険に加入している外国人が退職した際は、雇用保険の資格喪失届を提出することで代替されます。

しかし、アルバイト等で、加入していない外国人が退職する場合については別途提出が必要です。

2.日本人と同様の退職手続き

外国人の退職には、在留資格に関連した手続き以外にも、日本人と同様に必要な手続きがいくつかあります。

(ア)健康保険の被保険者証の回収

退職時に健康保険の被保険者証を回収し、健康保険資格喪失の手続きを行います。健康保険の資格喪失は退職後5日以内に届け出ることが求められています。

(イ)雇用保険の離職票の交付

雇用保険に加入していた場合、離職票を交付し、失業手当を申請する際に必要な情報を記載します。これは日本人と同じく、雇用保険の受給申請に必要なため、正確に記入します。

(ウ)源泉徴収票の交付

源泉徴収票は、その年の所得税額や控除額が記載されており、次の職場や確定申告で必要となる重要な書類です。外国人労働者にもしっかり交付しましょう。

(エ)住民税の未納残額がある場合の手続き

退職者が支払うべき住民税が未納の状態で退職する場合、自治体の窓口で支払い手続きを行う必要があります。

退職前に未納分がないか確認し、手続きについて案内することで、外国人退職者が日本での税務トラブルを避けられるようサポートします。

(オ)健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届の提出

社会保険に加入している場合、退職後5日以内に健康保険と厚生年金の資格喪失届を提出します。これにより、外国人社員の保険・年金の加入状況が適切に終了します。

(カ)退職証明書の作成・交付

退職証明書は、労働基準法第22条に基づき、退職者が希望する場合に作成し交付します。これには退職日や職歴が記載され、次の職場での手続きにも役立ちます。外国人退職者に対しても同様に交付しましょう。

3.外国人本人が行う退職に関する手続き

外国人が退職後に行うべき手続きもあり、企業側として本人に周知することが重要です。

(ア)所属(契約)機関に関する届出

外国人が退職した際は、入国管理局に対して「所属(契約)機関に関する届出」を本人が行う義務があります。この届出は、外国人の在留資格に基づく雇用状況を管理するためのものであり、退職後2週間以内に届け出なければなりません。この手続きを怠ると在留資格の違反に該当するため、外国人社員に手続き方法をしっかりと案内しましょう。

4.外国人が帰国する際の注意事項

退職後に母国へ帰国する外国人社員には、以下のような手続きが必要です。

(ア)住民票の転出届

帰国する外国人は、住民票の転出届を市区町村役場に提出する必要があります。この転出届を提出することで、日本国内の住民登録が解除され、住民税や国民健康保険の適用が終了します。

(イ)銀行口座の解約

帰国後も不要な銀行口座は閉鎖しておくことが望ましいです。口座内に未処理の支払いがないことを確認し、不要であれば解約を案内しましょう。日本国内で口座を保有することにはリスクも伴うため、帰国前に手続きを完了することが推奨されます。

(ウ)住民税の支払い

日本での住民税が未払いのまま帰国することがないよう、未納分がある場合は支払い方法について事前に確認します。支払いが完了しないと、再入国時に支障が生じる可能性があるため、早めに対応することが重要です。

(エ)脱退一時金の手続き

外国人が厚生年金に加入していた場合、帰国後に「脱退一時金」を申請することができます。脱退一時金は、厚生年金の掛け金に応じた金額が支給される制度で、帰国後6ヶ月以内に申請手続きを行います。この制度に関する情報を提供し、本人が適切に手続きを行えるよう案内しましょう。

よくある質問(Q&A)

退職後、帰国する場合、在留カードはどうしたらよいですか?
日本で転職する予定もなく、帰国する場合は出国の際、出入国港(空港)で返納してください。
出入国港(空港)で返納をし忘れてしまいました。どうすればよいですか?
在留カードの返納は郵送でも受け付けています。下記の公式サイトの返納書類に明記の上、郵送で返納ください。詳しくは公式サイトをご参照ください。

5.まとめ

外国人社員の退職時の手続きには、在留資格に基づく特別な届出や、日本人と同様の退職手続きが含まれます。さらに、帰国に際しても住民票や年金に関する手続きが必要です。

企業が適切に対応し、外国人社員に必要な情報を提供することで、法的リスクを回避し、退職者が円滑に次のステップに進むサポートができます。
外国人労働者の退職と帰国をスムーズに進められるよう、今回の記事をご参考いただければ幸いです。

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