企業内転勤ビザ(在留資格)は、外国のグループ会社(親会社・子会社・関連会社)などで働く外国人を、日本国内の拠点へ転勤させる際に利用される就労ビザです。

企業内転勤ビザを活用することで、海外に拠点を持つグローバル企業等は、特定のスキルや知識を持つ人材を迅速に日本拠点に配置することが可能になります。ただし、外国の自社グループ会社の従業員であれば、誰でもビザが取得できるというわけではなく、細かな条件があります。

この記事では、①企業内転勤ビザ(在留資格)で海外グループ会社等から呼ぶための条件、②技術・人文知識・国際業務ビザとの違い、③活用メリット(学歴要件・転職可否・雇用契約等の違い)、④更新時の注意点等を詳しく解説いたします。

企業内転勤ビザ(在留資格)の必要条件・要件

(ア)企業間の条件(要件)

企業間の要件(条件)は、海外にある「転勤元」と日本にある「転勤先」が、①同一法人内、又は、②親子関係等の関係にあることです。具体的には、以下の異動パターンが挙げられます。

企業内転勤ビザで呼ぶことができる異動パターン
  • 本社・支社・営業所間の異動
  • 親会社・子会社間の異動
  • 親会社・孫会社間および子会社・孫会社間の異動
  • 子会社間の異動
  • 孫会社間の異動
  • 関連会社への異動 ※資本関係が20%以上等条件あり。

必ずしも同一の法人である必要はなく、子会社・孫会社・関連会社(資本関係20%以上等の条件あり)においても認められます。

但し、代表者個人が日本法人、海外法人に出資しているのみ(出資者が同じだけ)という場合、会社間での資本関係がなく、要件を満たしません。

(イ)申請者(外国人)本人の条件(要件)

申請者(外国人)本人の要件・条件

就労期間:
(海外の)転勤元企業において、少なくとも1年以上の就労経験があること。

給与基準:
日本で支給される給与が日本人社員と同等、またはそれ以上の水準であることが望ましいとされています。

(ウ)働くことができる職種・仕事内容

企業内転勤で働くことができる職種・仕事内容

技術・人文知識・国際業務ビザで働くことができる職種。具体的には次の仕事内容が挙げられます。

  • 技術者(設計・エンジニア等)
  • IT企業でシステムエンジニア・プログラマー
  • 貿易事務、海外取引業務、翻訳通訳
  • 商品企画開発・土地開発・サービス開発
  • 語学教師

企業内転勤ビザは、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格にあてはまる職種・仕事内容である必要があります。

詳しくは、「技術・人文知識・国際業務」の記事で解説していますので、ご参考ください。

技術・人文知識・国際業務との違い

ではなぜ、技術・人文知識・国際業務ビザと同じ職種・仕事内容なのに、企業内転勤ビザがあるのかというと、海外のグループ会社で働いている外国人を日本に転勤させやすくなるからです。

具体的な条件・要件の違いは以下の通りです。

企業内転勤ビザ 技術・人文知識・国際業務ビザ
対象となる外国人 海外グループ会社(親会社・子会社・孫会社・関連会社)等で働いてる外国人 日本で新規雇用される外国人
審査要件 海外グループ会社等で1年以上の就労経験があること 【理系文系の専門職(自然科学・人文科学)】
専門分野の学部で大学(或いは専門学校)を卒業していること
(または10年間の実務経験が必要)
【通訳、貿易事務などの専門職(外国文化)】
大学を卒業していること
(または3年間の実務経験が必要)
などの要件がある。
滞在目的 海外グループ会社等からの転勤による滞在 (特定の企業ではない)日本の会社で働くために滞在
転職の可否 転職不可 転職可
雇用主(雇用契約先) 海外グループ法人のままでもOK(雇用契約を維持できる) 日本の会社との直接雇用(新たに日本法人の雇用契約を締結する)
給与の支払い 海外グループ会社から支払ってもOK
日本法人との折半でもOK
日本の会社が支払う

企業内転勤ビザ(在留資格)のメリット

メリット①:学歴要件が不問

技術・人文知識・国際業務ビザでは必要とされる学歴要件を満たさなくても、海外グループ会社で1年以上の就労経験があれば、要件(条件)を満たすことができる。特に、大学(又は専門学校)卒業要件がなく、仕事と関連する学問を専攻していた必要もない点はメリットが大きい。

メリット②:転職できない

技術・人文知識・国際業務ビザは転職可能のため、優秀な外国人材が引き抜かれる可能性があるが、企業内転勤は転職不可である。そのため、転職リスクがない点もメリットとして大きい。

メリット③:転職元在籍のままもOK(雇用契約は海外グループ会社のままでOK):

技術・人文知識・国際業務ビザは、働く日本の会社との直接雇用契約を締結することが必須ですが、企業内転勤ビザは転職元(海外グループ会社)に在籍したまま、日本で働くことが可能です(つまり、転職元(海外グループ会社)の雇用契約を維持できる)。加えて、給料の支払い方法についても、転職元(海外グループ会社)負担や、日本法人と折半など、柔軟な対応が可能であることもメリットです。

入管法を確認

入管法をみると、企業内転勤ビザに関する記載は以下の通りです。

申請人が次のいずれにも該当していること。

一 申請に係る転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる業務に従事している場合で、その期間(企業内転勤の在留資格をもって外国に当該事業所のある公私の機関の本邦にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には、当該期間を合算した期間)が継続して一年以上あること。

二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

注:「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」より

企業内転勤ビザ(在留資格)の必要書類

企業内転勤ビザの申請で必要な書類は、転勤元、転勤先の会社の状況や海外グループ会社との関係などによって異なりますが、一般的には以下の書類が必要となります。

企業内転勤ビザの必要書類

【本人に関する書類】
証明写真
パスポートのコピー(顔写真ページ)
転職元(海外グループ会社)の在職証明書

【転職元(海外グループ会社)が用意する書類】
日本の会社との資本関係を証明する書類(出資者名簿等。日本語訳必須)
会社案内(会社の事業概要、設立年、沿革、資本金、役員情報、主要取引先名を記載したもの)
転勤辞令書(転職元から発行されたもの)

【転職先(日本の会社)が用意する書類】
雇用契約書
履歴事項全部証明書
当該日本法人と外国法人との出資関係を明らかにする資料(株主名簿等)
会社案内(会社の事業概要、設立年、沿革、資本金、役員情報、主要取引先名を記載したもの)
決算報告書 ※直近年度分
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表 ※直近年度分

【補足資料(該当する場合、提出を推奨するもの)】
大学の卒業証明書(大卒の場合)
日本語能力検定等、関連する資格の合格証書
転職元、転職先の営業許可証

企業内転勤ビザ(在留資格)の支援事例

一般的な親子関係のあるケースでの企業内転勤が多いですが、少々複雑な支援事例として以下の内容が挙げられます。

日本法人A社 A社は、プラスチック製品の企画・設計業務を行い、販売活動(営業)を営む。
日本法人B社 B社は、A社が企画・設計し受注したプラスチック製品を国内で製造する生産拠点として活動。
海外法人X社 X社は、A社から受注した製品の海外生産案件を担当し、中国で製造した製品をA社に輸出する貿易会社。
A社はX社の株式を25%保有している。
海外法人Y社 Y社は、X社を通じて受注したA社の案件について、企画・設計および製造を行う海外生産拠点。
X社がY社の株式を100%保有している(Y社はX社の完全子会社)。

上記の関係がある中で、Y社の設計技術者を、A社に企業内転勤させるといった事例です。

このような場合、A社→X社(A社が25%株式保有)→Y社(X社が100%株式保有)という関係が成立するため、孫会社から親会社への転勤という関係性が成立します。

当該条件をクリアしていることを確認し、各種必要書類の作成や収集などを適切に行ったことで、スムーズに企業内転勤ビザを取得できたという案件をご紹介させていただきました。

更新時の注意点

企業内転勤ビザの更新時には、海外法人から給与を支払っている場合、課税証明書・納税証明書に給与所得金額が反映されず、更新許可がスムーズに進めないことがあります。できれば全額日本法人負担、それが難しければ、折半(日本の生活に必要な資金を日本法人負担)にすることをおすすめいたします。

項目詳細
課税証明書に給与所得が反映されない理由給与が全額海外法人から支払われている場合、その所得にかかる税金は支払先の国で課税されることが一般的です。
二重課税防止条約の適用日本とその国の間に二重課税防止条約が適用される場合、日本では追加で税金を支払う必要がなくなることがあります。

給与を海外法人支払いにする場合の対応策

給与を海外法人から支払う場合、日本の課税証明書・納税証明書に給与支給額が反映させず、更新許可に問題が生じます。その解決策として、海外で税金を支払った証明書を提出します。手続きには時間と手間がかかるため、更新申請時期から逆算し、早めの準備が必要となります。また、証明書が英語以外の言語で発行される場合は、日本語訳を添付する必要があります。

上記の対応ができれば、(おすすめはいたしませんが)給与を海外法人支払いしても問題ございません。更新は在留期限の3カ月前から可能です。他の就労ビザと共通ですので、課税証明書・納税証明書の取得方法と合わせて、別記事をご参考ください。

企業内転勤ビザ(在留資格)のよくある質問(Q&A集)

日本法人・海外法人の出資者は、双方ともに代表者個人が出資しています。この場合、企業内転勤ビザの要件(条件)を満たしますか?
満たしません。法人間での出資関係が必要で、出資者が同じであるだけの場合は、技術・人文知識・国際業務ビザの活用を検討する必要があります。
給与支払いは、全額海外法人負担でもよいですか?
はい。全額海外法人でも構いません。ただし、母国の通貨で払うなどの場合は注意が必要です。外国人が日本で適切に生活できるよう、サポートする等の対応をしてください。
できれば、「日本での生活費は、日本法人から日本円で日本の銀行口座へ払う」「残りを海外法人で現地通貨で海外の銀行口座へ支払う」という方法がベターだと思われます。
また、海外法人と日本法人が折半で支払ったり、日本法人が全額負担する形でもOKです。
海外法人が給与の支払う場合のデメリットはありますか?
海外法人が給与を支払った場合、更新時に必要な課税証明書・納税証明書に給与所得金額が反映されないことがあります。
理由は、海外で税金を払っており、(二重課税防止条約がある場合、)日本では払う必要がないからです。その場合、海外で税金を支払った証明書を取得するなど手間がかかります。
できれば、給与については、日本法人が負担することをおすすめしています。例えば、給与を日本法人が負担して、当該外国人に関する諸経費を海外法人が請求するなどの取り決める等で対策する等が考えられます。
どのような場合、企業内転勤ビザをおすすめしますか?
企業内転勤では、①学歴要件が不要(1年間海外グループ会社で勤務していればOK)、②転職できない、③転職元(海外法人)のまま日本で働くことができる(雇用契約は海外法人のままでOK)の3点が主なメリットです。技術・人文知識・国際業務ビザでは要件を満たさない場合や転職リスクを考慮する必要がある場合はオススメします。

企業内転勤ビザ(在留資格)をお考えの企業様へ(大阪から全国対応可)

この記事では、①企業内転勤ビザ(在留資格)で海外グループ会社等から呼ぶための条件、②技術・人文知識・国際業務ビザとの違い、③活用メリット(学歴要件・転職可否・雇用契約等の違い)、④更新時の注意点について解説いたしました。

企業内転勤ビザで自社の日本法人へ呼び寄せるためには、事前準備が重要になってきます。
さらには、自社グループの日本法人または海外法人の社歴が浅い場合は、特に十分な説明資料を作成する必要があります。

企業内転勤で希望の外国人の方を日本勤務に呼び寄せることができるかどうかは、申請企業様に取っても外国人の方に取っても、今後に大きく影響してきます。
そして、許可されるか否かは、相談する専門家の技量も大きく関わってきます。スムーズに取得するためにも信頼できる専門家にご相談することをお勧めいたします。

「企業内転勤ビザ」の申請をご検討の会社様は、お気軽にクレアスト行政書士事務所までお尋ねください。オンライン申請、WEB会議等を駆使し、大阪から全国の中小企業様をサポートしています。※弊所は、大阪入国管理局管轄区域に事務所を有していますが、在留申請オンラインシステムで全国のビザ申請代行(取次)に対応しています。