日本で会社を設立したいと考えている外国人にとって、会社設立手続きは複雑に感じられることが多いと思います。

しかし、日本での会社設立は、適切な専門家のサポートを受け、適切な手順を踏めば、意外とスムーズに進めることができます。

この記事では、外国人が会社設立する上で、知っておきたいこと、必要書類、注意点、経営管理ビザとの関係性などについて詳しく解説いたします。

外国人の会社設立に、経営管理ビザは必要なのか?

長期滞在する場合 経営管理ビザは必要
長期滞在しない場合 経営管理ビザは不要

「経営・管理ビザ」は、外国人が、日本で会社を設立して、継続的(長期的に)経営又は管理に従事するための在留資格です。

しかし、外国人が会社設立する際に、絶対に必要という訳ではありません。

(ア) 経営管理ビザが必要となるケース

日本に長期滞在して、会社経営に従事する場合

外国人が日本で会社設立後、その会社の代表取締役として経営に直接関わり、長期滞在する場合は、経営・管理ビザの取得が必要です。日本に長期滞在して経営を継続するためには、ビザがないと活動できません。

経営管理ビザの取得に必要な要件は、別記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

(イ)経営管理ビザが不要なケース

日本に長期滞在しない場合

日本に長期滞在して経営活動を行わず、短期の出張やリモートでの指示のみで会社を運営する場合は、経営・管理ビザが不要となるケースがあります。この場合、90日以内の短期滞在ビザを利用して一時的に来日し、経営に関する指示を行う方法が一般的です。(90日以内の短期ビザを何度も繰り返し使い、長期的に日本に滞在することはNG)

また、投資家や株主として会社に資金を提供するだけで、経営の実務には関与しない場合も、経営・管理ビザは必要ありません。

会社設立と経営管理ビザの申請先の違い

会社設立 公証役場及び法務局
(会社を設立する地域の公証役場及び法務局)
経営管理ビザ 入国管理局
(管轄区域の地方入国管理局)

上記の通り、会社設立と経営管理ビザは、申請先・審査基準も全く異なります。

しかし、それ故に、「会社設立はできたが、経営管理ビザは不許可になってしまった!」ということ起こる可能性があります。

ですので、経営管理ビザを取得する前提で、外国人が会社設立を行う場合は、ビザ申請に強い申請取次行政書士等に相談することをオススメします。

一方で、海外で会社を経営していて、日本に進出するために日本法人を設立する場合など、時々日本に訪れるだけで、経営管理ビザの取得はいらないというケースもあると考えられます。

会社の種類:株式会社と合同会社の違い

会社を設立する際、一般的には株式会社を設立するケースが多いですが、合同会社を設立するケースも増えてきています。
経営管理ビザを取得する前提の場合であっても、株式会社・合同会社のどちらでも構いません。

どちらがよいかというと、一概には言えませんが、一般的には株式会社の方を選ぶ方が多いです。
(合同会社を選ぶメリットは設立コストが安いことです。株式会社の設立費用20万円~に対して、合同会社は6万円~設立可能。)

株式会社 合同会社
資金調達 株式を発行して投資家から資金を集められる 出資者(社員)からの出資のみ
役員の構成 代表取締役、取締役 代表社員、社員
設立費用 登録免許税15万円~ + 定款認証5万円 登録免許税6万円~
信用度 対外的信用度が高い。外部からの資金調達にも有利 株式会社に比べると信用度は低い
定款認証 定款の公証人認証が必要 公証人認証が不要(但し、定款作成は必要)

外国人が会社設立する際の流れ

外国人が会社設立する際の必要書類は、基本的には日本人と同じで、(ア)定款作成(認証)、(イ)登記申請というプロセスを踏みます。

但し、注意点もありますので、詳しく解説していきます。

(ア)定款作成(認証)

株式会社も合同会社も定款作成をする必要があります。

但し、株式会社は公証役場で定款認証する必要(5万円)があるのに対し、合同会社は定款認証は不要です。(そのため、合同会社は定款認証料が不要)

(イ)登記申請

株式会社も合同会社も法務局に登記申請する必要があります。

登録免許税は、株式会社の場合は15万円~、合同会社の場合は6万円~です。(資本金金額により異なる)

外国人が用意する必要書類

外国人が用意する必要書類

(ⅰ)外国人(及び発起人)の印鑑証明書及び実印(またはサイン証明書)
(ⅱ)資本金を振り込む銀行口座
(ⅲ)法人の印鑑 ※登記申請時に必要

(ⅰ)外国人ご本人の印鑑証明書及びその実印(またはサイン証明書)

発起人となる外国人ご本人の印鑑証明書とその実印(印鑑)が必要です。
印鑑証明書は、母国の印鑑証明書でもOKで、会社設立手続きに使用できます。

印鑑証明書がない国の場合は、サイン証明書が代替え手段となります。現地の日本大使館や領事館でサイン証明書の発行を依頼します。本人確認書類等を提示し、所定の書式にサインを行うことで証明書が発行されます。

【外国人特有の注意事項】
母国の印鑑証明書(又はサイン証明書)には、必ず日本語訳文が必要です。
・発起人が(外国人個人ではなく)外国法人の場合は、代表取締役印の印鑑証明書(又はサイン証明書)と翻訳文、宣誓供述書(日本法人の履歴事項全部証明書に代わるもの)が必要です。
・その他、母国語の書類は、原則日本語訳を付ける必要があります。

(ⅱ)資本金を振り込む銀行口座

資本金を振り込む銀行口座も準備する必要があります。

但し、銀行口座はどの銀行でもよいわけではなく、日本の銀行又は、海外銀行の日本支店である必要があります。

〇 日本の銀行の日本国内本支店(例:大阪U銀行の大阪駅前支店(仮称))
〇 日本の銀行の海外支店(例:大阪U銀行の上海空港支店(仮称))
〇 海外の銀行の日本国内支店(例:スイス銀行の大阪駅前支店(仮称))
×外国銀行の海外本支店(例:スイス銀行のスイス空港支店(仮称))

(ⅲ)法人の印鑑 ※登記申請時に必要

定款認証時には必要ありませんが、登記申請をする際は、法人の印鑑(新設する会社の印鑑)を作成する必要があります。

そして、登記申請書類に、法人印を押印して申請することになります。

外国人が決める必要があること

外国人が会社設立する際に決めておく必要がある項目は次の通りです。

専門家のサポートを受ける場合は、ヒアリング等をしてもらい、説明を受けながら、決めていけばよいと思いますが、一覧として纏めています。

外国人が決めておくこと

・発起人、取締役(合同会社の場合は社員)の氏名と住所
・会社設立予定日
・会社名(アルファベット表記を含む)
・目的(会社の事業内容)
・本店所在地
・事業年度
・資本金 ※経営管理ビザ取得の場合は資本金要件あり
・1株発行価格 ※株式会社のみ
・発行可能株式総数 ※株式会社のみ
・公告の方法(官報・日刊新聞・電子公告) ※株式会社のみ
・役員の任期(最長10年) ※株式会社のみ
・取締役会設置の有無  ※株式会社のみ

作成・提出する書類一覧

会社設立時に公証役場や法務局へ提出する書類一覧です。

専門家のサポートを受ける場合は作成して貰えるので、外国人の方は、その書類に押印(又はサイン)したり、完成したものをチェックする形になります。

定款認証時に提出する書類

・定款
・発起人の印鑑証明書(海外のものは日本語訳を添付)
・実質的支配者となるべき申告書
・委任状 ※行政書士又は司法書士に依頼する場合
・電子署名を付与 ※電子認証の場合:電子認証だと印紙代4万円が不要となる為、弊所では電子認証にて対応
※合同会社の場合は不要(定款認証が不要のため)

登記申請時に提出する書類

・設立時取締役の就任承諾書
・発起人決定書
・資本金の額の計上に関する証明書
・払込みがあったことを証する書面
・資本金を振り込んだ証明書類(銀行通帳のコピー等)
・印鑑カード交付申請書
・(法人印の)印鑑届書
・委任状 ※行政書士又は司法書士に依頼する場合

外国人特有の問題:日本に住所がないと銀行口座が作れないこと

外国人特有の一番の問題は、銀行口座が作れないことです。

銀行口座が作れないと資本金が振り込めず、会社を設立することができません。

解決策1:日本に住む協力者の銀行口座を使用する

日本に住所がない外国人が会社設立する場合、日本に住む協力者の銀行口座を利用する方法があります。

具体的には、①外国人と共同で発起人(又は取締役)になって、一緒に会社を設立するケース、②全くの第三者の口座を利用するというケースがあります。

①は昔から利用されている方法で弊所でサポートする外国人の方も多く利用しています。

一方、②については、平成27年3月16日「民商第29号通知」により、発起人及び設立時取締役以外の「第三者」でも、口座名義人として認められるようになりました。

解決策2:4カ月の経営管理ビザを取得し、日本の銀行口座を作る

出来る限り、日本に住む協力者と共に会社設立することをおすすめしていますが、どうしても見つけられない場合は、4カ月の経営管理ビザを取得して、日本に銀行口座を作るという方法が挙げられます。

4カ月の経営管理ビザのメリットは、”資本金の振込”、”事務所の賃貸契約”を後回しにできることです。

4カ月の経営管理ビザを取得しておき、その間に、”銀行口座開設”、”会社設立”、”事務所の賃貸契約”を実施することができます。

会社設立から経営管理ビザを取得するまでの目安の期間

外国人が会社設立のみを行う場合は、1~1.5ヶ月程度

会社設立だけでなく、経営管理ビザの申請まで行う場合は、1.5~2ヶ月程度を目安としてください。

ただし、経営管理ビザの審査期間は1.5~4カ月程度かかるので、取得するまでの期間は3~6カ月程度を見ておく必要があります。お急ぎの場合は、別途専門家に相談することをおすすめいたします。

  1. Step1:会社設立に必要な書類を揃える:1~2週間
  2. Step2:専門家へ相談、各種申請し、会社設立:3~4週間
  3. Step3:(経営管理ビザを取得する場合)経営管理ビザの必要書類を揃え申請する:2週間
  4. Step4:審査期間1ヶ月~4ヶ月程度(新規認定申請は2~4カ月、留学生等からの変更申請は1.5~2カ月が目安)の上、経営管理ビザ取得

5. 外国人の会社設立とビザに関するよくある質問

日本で会社を設立するだけならビザは不要ですか?
はい、会社設立自体にビザは不要です。
日本に在住している日本人や他の取締役に代理で手続きを行ってもらうことも可能です。ただし、日本に長期的に滞在し、経営活動を行う場合は、経営・管理ビザが必要です。
日本に住所がなくても、会社設立はできますか?
はい。できます。但し、資本金を振り込む銀行口座が必要です。できれば、日本に住所のある協力者を探し、その人の銀行口座を使用し、設立することをおすすめします。
短期滞在ビザで定期的に来日して経営活動を行うことは可能ですか?
はい、可能です。
例えば、普段は母国で会社経営していて、日本法人を設立した場合などが考えられ、商用目的の短期滞在ビザで来日し、経営活動を従事する方法が考えられます。
但し、長期的な経営活動を行うことは難しいので、1年に何回も頻繁に利用することを前提とすることはできません。その場合、入国管理局の審査対象となる場合もあるため、経営・管理ビザの取得が推奨されます。
短期滞在で来日し、会社設立と経営管理ビザを申請しました。その後、帰国する前に経営管理ビザを取得できた場合、短期滞在から経営管理ビザへ変更できますか?
できません。短期滞在で来日した場合、原則、1度帰国し、母国の日本大使館で手続きし、再度来日する必要があります。
外国人でも会社の代表印(実印)は必要ですか?
はい、会社実印の登録が必要です。
会社設立の登記には、代表印(会社実印)の登録が必須です。これは会社の実印として、契約や登記申請などで使用されます。設立後に法務局で「印鑑カード」の取得します。

さいごに

クレアスト行政書士・中小企業診断士事務所では、外国人の会社設立から経営管理ビザの取得までサポートしています。

ご不明な点があればお気軽にお問い合わせください。大阪周辺を始めとした関西一円の会社設立と経営管理ビザのご相談はお任せください。